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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第4章 孤独な到達点

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第029話 二体目の痕跡

朝、ユイは目を覚ました。

体が冷えている。夜露が服を濡らしていた。立ち上がる。体が重い。肩も腰も、昨日と変わらず痛む。だが、動く。

空はまだ暗い。夜明け前だ。


ユイは装備を確認し、歩き出した。短剣の状態を確かめる。刃こぼれはない。回復薬は残り2本。昨夜1本使った。足りない。だが、これで行くしかない。


東の山脈地帯に入る。

岩肌が露出した険しい道だ。足場が悪い。一歩ごとに小石が崩れ、足を取られそうになる。だが、ユイは迷わず進む。何度も通った道だ。記憶が体に染みついている。


しばらく進むと、村の跡が見えた。

建物が崩れている。壁が焼け焦げ、屋根が落ちていた。煙の匂いが残っている。人の気配はない。逃げたのか、それとも。


ユイは村に入る。

通りを歩く。


家々は破壊されていた。扉は外れ、窓は割れている。中を覗く。誰もいない。家具が散乱し、食器が割れている。急いで逃げた痕跡だ。


広場に出る。

井戸が壊れていた。石が砕け、水が枯れている。地面には、大きな爪痕があった。


幻モンスターだ。


ユイは爪痕を見る。深い。3本の爪。それぞれが人の腕ほどの太さだ。岩よりも硬い地面が、まるで泥のように抉られている。


2体目の痕跡だ。


さらに奥へ進む。

村の端に、焼け焦げた畑があった。作物は灰になり、土は黒く変色している。炎だ。高熱で焼かれた痕跡。草も木も、すべてが炭になっている。


ユイは膝をつき、土に触れる。まだ温かい。


最近だ。

2日、いや、1日前かもしれない。熱がこれだけ残っているということは、炎の温度は尋常ではなかった。通常の魔物では出せない熱量だ。


立ち上がる。

視線を巡らせる。村の向こうに、山が続いている。頂上は雲に隠れていた。灰色の雲が、低く垂れ込めている。


あそこだ。


ユイは村を出て、山道へ入る。

道は険しくなる。


岩を登り、崖を回り込む。足を滑らせれば、落ちる。下は見えない。だが、ユイは迷わない。手を伸ばし、岩を掴む。足場を確かめ、体を引き上げる。


途中で、魔物が現れた。岩陰から飛び出してくる。灰色の獣だ。赤い目をしている。牙が剥き出しになっている。


ユイは短剣を抜く。

魔物が飛びかかる。ユイは横に身を捌き、刃を振るった。魔物の首に刃が入る。血が飛び散る。魔物は地面に倒れた。痙攣し、動かなくなる。


ユイは短剣を拭い、鞘に納める。

一瞬だった。


さらに進む。

別の魔物が現れる。今度は2体だ。


ユイは立ち止まらない。走りながら、1体目に短剣を投げる。刃が魔物の目に刺さる。魔物が倒れる。悲鳴を上げることもなく、崩れ落ちた。


2体目が襲ってくる。ユイは腰の短剣を抜き、魔物の腹を切り裂いた。魔物が崩れる。内臓が地面に落ちる。


ユイは投げた短剣を拾い、歩き出す。


無駄がない。

何度も繰り返してきた動作だ。体が覚えている。考える必要もない。


だが、楽しくはない。


山の中腹に差し掛かる。

岩壁が続いている。その壁に、巨大な爪痕があった。村で見たものより、さらに大きい。幅も深さも、倍以上ある。


ユイは爪痕に触れる。深い。岩が削られている。指を差し込むと、第二関節まで入った。


また、近くにいる。


ユイは顔を上げた。山の上から、熱い風が吹いてくる。硫黄の匂いが混じっていた。喉が痛む。空気が悪い。


頂上へ向かう。

道はさらに険しくなる。


岩場を登る。手を切る。血が滲む。だが、止まらない。痛みは慣れた。何度も経験してきた。


雲の中に入る。視界が悪い。だが、ユイは進む。方向感覚だけを頼りに、足を進める。


雲を抜けた。

頂上が見えた。


そして、そこに、それはいた。


巨大な翼を持つ獣だった。

全身が黒い鱗に覆われている。4本の足は、岩を砕くほどの爪を持っていた。頭部は竜に似ているが、角が3本生えている。目は深紅だ。炎が宿っているように見える。


翼を広げる。風が吹く。熱い風だ。ユイの髪が揺れる。

炎の匂いがする。


グラヴォルス。

2体目。

炎と破壊の幻。


ユイは短剣を抜いた。

グラヴォルスが、ユイを見た。動かない。ただ、見ている。瞳に、ユイの姿が映っている。


ユイも、動かない。

風が吹く。


2人の距離は、50メートルほどだ。広い頂上の、中央にグラヴォルスが立っている。周囲には、焼け焦げた岩が散らばっている。


ユイは呼吸を整える。心臓が、静かに打っている。鼓動が、耳に響く。


グラヴォルスが、口を開いた。低い音が響く。咆哮ではない。ただの、音だ。だが、空気が震える。


ユイは短剣を構え直す。両手に1本ずつ。刃を前に向ける。


何度目だ、お前との戦いは。


ユイの声は、小さかった。風にかき消される。

諦めが、滲んでいた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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