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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第4章 孤独な到達点

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第028話 歪んだ世界

朝、ユイは宿を出た。

街を歩く。昨日と変わらない景色だ。だが、何かが違う。空を見上げる。灰色の雲が厚い。だが、その向こうで色が揺れていた。紫がかった光が、一瞬だけ見えた。


また、か。


ユイは視線を戻す。足を進める。


市場を通る。

商人たちの声が聞こえる。だが、活気はない。疲れた声だった。


「また魔物が出たらしいな」

「昨日も、街道で被害が出た」

「いつまで続くんだ、この状況」


ユイは立ち止まらない。会話は途切れ、視線が集まる。そして、避けられる。


3年前だ。

1体目を討伐したのは。世界は変わると思った。だが、何も変わらなかった。いや、悪くなった。


空の色がおかしくなる。時折、赤や紫に染まる。魔物の発生頻度が高まった。街道は危険になり、人々は外に出ることを恐れるようになった。


意味がなかったのか。

1体倒したくらいでは、何も変わらない。


ユイはギルドへ向かう。

建物は、前と変わらない。だが、中に入ると、空気が違った。冷たい。受付カウンターに立つ女性は、ユイを見て表情を硬くした。


「セイラスさん、依頼ですか?」


声は冷たかった。ユイは首を横に振る。


「いや、情報だけ」


「情報、ですか」


受付嬢は少し間を置いた。それから、棚から書類を取り出す。


「どのような情報を?」


「東の山脈地帯。魔物の目撃情報」


受付嬢は書類をめくった。目を通し、ユイに向ける。


「3日前、大型の魔物が目撃されています。被害状況は不明。調査隊は派遣されていません」


「分かった」


ユイは踵を返す。受付嬢が声をかけてきた。


「セイラスさん、単独行動は推奨していません」


ユイは振り返らなかった。


「分かっている」


ギルドを出る。

背後で、小さな声が聞こえた。


「あの人が、1体目を倒したって本当なのか」

「知らない。だが、倒したところで、何も変わらなかった」

「1体倒したくらいじゃ、意味がなかったんだろう」


足が止まる。

だが、すぐに歩き出す。反論しても意味がない。事実だ。


ユイは街を歩き、宿へ戻った。部屋で装備を整える。短剣を研ぎ直す。回復薬を確認する。残りは3本。足りない。だが、これで行くしかない。


地図を広げる。東の山脈地帯。そこへ向かう。


昼過ぎ、ユイは街を出た。

南門を抜け、街道を進む。街道沿いには、人影がほとんどない。旅人も、商人も、誰もいない。魔物が出るからだ。


ユイは街道を外れた。東へ向かう。草原を抜け、森を通り、山道に入る。


足音だけが響く。


空を見上げる。

雲の向こうで、また色が揺れていた。赤い光。紫の光。自然ではない色だ。


世界は、歪んでいる。


1体目を倒しても、世界は元に戻らなかった。むしろ、歪みが広がった。なぜだ。

答えは、まだ分からない。


山道を進む。


途中で、魔物が現れた。小型の獣だ。赤い目をしている。ユイは短剣を抜く。魔物が飛びかかってくる。ユイは身を捌き、刃を振るった。一撃で仕留める。


動きは、無駄がない。

体が勝手に動く。何度も繰り返してきた動作だ。


だが、楽しくはない。


さらに進む。

日が傾き始めた。夕日が山を照らす。ユイは足を止め、振り返った。


街が、遠くに見える。小さく、静かだ。

誰も、見送らなかった。

誰も、声をかけなかった。


それでいい。


ユイは前を向く。

夜営の準備をする。


木の根元に座り、パンを食べる。味はしない。水を飲む。回復薬を1本、念のため飲んでおく。体が少し楽になった。


火は焚かない。魔物を引き寄せる。


暗闇の中で、ユイは空を見上げた。星は見えない。雲が厚い。


仲間がいれば、違ったのかもしれない。


そんな考えが浮かぶ。

だが、すぐに消す。


今更だ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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