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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第4章 孤独な到達点

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第027話 消耗する日々

目が覚めた。

天井の板が、薄暗い光の中で浮かんでいる。古い木材の匂いがした。小さな宿の部屋だ。


体を起こす。重い。

肩が痛む。腰も、膝も、すべてが鈍く痛んでいた。痛みは慣れた。もう何年もこの状態だ。


ベッドから降り、窓を開ける。冷たい風が入ってきた。街は静かだった。朝の空気が肺に入る。息を吐く。


鏡の前に立つ。

映ったのは、疲れた女の顔だった。黒い髪は肩まで伸び、無造作に跳ねている。目の下に影ができていた。顔には細かい傷跡がいくつもある。老けた印象だ。


38歳。

ユイ・セイラス。


鏡から視線を外し、装備を確認する。黒銀の軽装鎧は、あちこちが擦り切れていた。補修した痕が目立つ。短剣は手入れされているが、刃には細かい傷が残っている。何度も研ぎ直したが、限界が近い。


回復薬を数える。残りは3本。足りない。


外へ出る。

街は静まり返っていた。朝の市場に人はまばらで、商人たちは小声で話している。ユイが通ると、会話が止まった。視線が集まる。


恐れているのだ。


ユイは気にせず歩く。食料を買う店に入った。店主は顔を上げたが、すぐに目を逸らす。


「パンを3つ」


ユイは短く言った。店主は黙って棚からパンを取り出し、カウンターに置く。


「5クリスタルコイン」


ユイは硬貨を渡した。店主は受け取るが、ユイの手に触れないよう注意している。


ユイは店を出る。背後で、小さな声が聞こえた。


「あれが、倒せない存在を倒した人間か」

「本当なのか、あの話」

「知らない。だが、近寄りたくはないな」


ユイは足を止めなかった。


宿へ戻る。部屋に入り、パンを机の上に置いた。椅子に座る。


机の上には、地図が広げられていた。書き込みだらけだ。印がいくつも付けられ、線が引かれ、日付が記されている。


2体目の情報だ。


目撃地点、被害状況、移動経路。すべて記録してある。何度も戦ってきた。何度も追ってきた。だが、まだ倒せていない。


ユイは地図を見つめた。


東の山脈地帯。最後の目撃地点だ。3日前、そこで戦った。倒れたと思った。だが、また動き出している。


「また、か」


呟く。声は、誰にも届かない。


窓の外を見る。

街の向こうに、山並みが見えた。空は灰色だった。雲が厚い。


1体目を倒してから、3年が経った。だが、世界は安定しなかった。むしろ、歪んでいる。空の色がおかしくなることがある。魔物の発生頻度が高まった。人々は疲弊している。


意味がなかったのか。


そんなことを考えても、仕方がない。


ユイは立ち上がり、装備を整えた。短剣を腰に下げる。鎧を身につける。動作は機械的だ。何度も繰り返してきた準備だ。


回復薬をベルトに差し込む。地図を畳み、懐にしまう。


部屋を出る。


宿の主人は、カウンターで俯いていた。ユイが通り過ぎても、顔を上げない。


外へ出る。風が吹いていた。冷たい。


ユイは街を歩く。人々はユイを避けた。誰も話しかけてこない。それでいい。


街の門をくぐる。外へ出ると、視界が開けた。街道が続いている。だが、ユイは街道を外れた。東の山脈へ向かう。


歩きながら、ユイは呼吸を整える。体が重い。疲労が抜けない。だが、止まるわけにはいかない。


2体目は、まだそこにいる。


倒さなければならない。何度でも。


宿に戻ったのは、夕方だった。


部屋に入り、装備を外す。ベッドに腰を下ろす。体が沈み込んだ。


窓の外を見た。

街の向こう、遠くで光が揺れた気がした。一瞬だけ、赤い光。


ユイは目を細める。


2体目だ。また、動いている。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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