第213話 ザインの報告
時刻は同じ。場所は王都から遠く離れた秘密拠点。
シャドウ・ヴェール。観察者たちの組織。その施設の奥深くでは、ザインが報告書を手にしていた。
内容を一行一行、ゆっくり読み進める。その顔には、深い満足感が浮かぶ。
「カオスナイトが討伐されました」
ザイン自身の言葉が、耳の奥に鳴り響く。三勢力による共闘。最下位のクロウフォール。三位のブレイズウォール。四位のラスティ。その三つが肩を並べて戦った。
何度も計画を練り、何度も修正した。だが、結果は完璧だった。
「計画は、順調だった」
ザインは呟いた。その言葉は、自分自身への確認だ。
彼の計画は、正確に進行していた。ほぼ完璧に。カオスナイト討伐。三勢力の共闘。世界への影響。すべてが、計画通りだ。
上司派は動揺していたはずだ。7番柱の光が消えたことへの戸惑い。その反応は、計画の正確さを証明していた。ザインは笑いを抑える。その笑顔には、深い満足感が詰まっていた。
「世界は、確実に動き始めている」
ザインの呟きは、誰にも聞かれることなく、室内に消えていった。
彼は窓の外を見た。夜の帳が下りた中、王都の灯が静かに瞬いている。その灯の中で、クロウフォール、ブレイズウォール、ラスティは帰還しているはずだ。
次のステップは決まっている。次の駒は移動している。世界の均衡は、すでに破られているのだ。
ザインはそのことを知っていた。
彼の計画の第一段階は完了した。だが、それは始まりに過ぎない。残り14体の幻モンスター。世界の真実。そして、あの女だ。ユイ・セイラス。
その名前を聞いた時から、ザインはそう確信していた。彼女こそが、世界を変える鍵になる。討伐隊に参加し、3勢力を動かし、カオスナイトを倒す。すべてが、計画の中にあった。
「面白い」
ザインは小さく笑った。
その笑顔には、興奮と確信が混在していた。次は何が起きるのか。世界はどう反応するのか。ユイ・セイラスは、次にどんな行動を起こすのか。
すべてが、ザインにとって興味深い。それは執着ではなく、観察者としての純粋な興味だ。
彼は報告書を閉じた。上司派への報告は必要ない。必要な時に、必要な情報だけを提供すればいい。今は、ただ観察を続ける。世界が動き始めたこの瞬間に。




