第212話 帰路の会話
その夜、クロウフォールの拠点へ向けて、彼らは再び歩き始めた。
道すがら、ユイはカイルに歩調を合わせた。
「カイル」
「はい、ユイ」
「お疲れ様」
「こちらこそ、ありがとうございました」
その会話は短いが、すべてが詰まっていた。盾役のリーダーへの信頼。リーダーから盾役への感謝。それ以上の言葉は必要ない。
セイラは相変わらず右足を引きずっているが、その目は冷静だ。エルザは無言で歩んでいるが、その背中には何かが変わったことが表れている。アイリスは後ろから偵察を続けているが、その軽やかさは戻り始めている。ハンスは無言で全員を見守っている。リリアとセリスは、二人で何かを話しながら歩んでいる。
ブレイズウォール側のメンバーたちも、それぞれの距離を保ちながら歩んでいた。レオンは先頭で指揮を続けている。その指揮には、何かが変わったことが表れている。ザークスは重傷から回復したばかりだが、その忠誠心は揺るがない。フィンとグレンは黙々と歩み続けている。
ラスティのメンバーたちも同様だ。ゼックは軽い口調で何か言いながら歩んでいるが、その奥には深い思考がある。ノア、ルーク、マーヴィンは、無言で役割を果たしている。ナオミだけが、何か思いを秘めたような表情で歩んでいた。
王都への帰路は、戻りの道だった。だが、帰ってくる彼らは、出発した時とは違う者たちだった。
三つのパーティが、肩を並べて歩く。
その光景は、世界の常識に反している。だが、その光景こそが、新しい時代の始まりを示していた。
クロウフォール8人、ブレイズウォール4人、ラスティ5人。17人が一つの目的を共有して歩む。通常、あり得ない光景だ。だが、誰も疑問を呈しなかった。
「なんか、変な感じですね」
カイルが呟いた。その言葉には、新しい時代への戸惑いと期待が混在していた。
「でも、悪くないかも」
アイリスが返した。偵察役の明るさは、戦闘の後も衰えていない。
セイラは無言だが、その表情は少し柔らかくなっていた。淡々とした氷魔法使いが、何かを感じ取っていることの証だ。
「これが、共闘か」
ハンスが呟いた。守護者の低い声は、すべてを理解していることを示していた。
その言葉に、誰も答えなかった。だが、全員がそれを感じていた。
王都の灯が、遠くに見え始めた。帰還の時が近づいている。だが、帰ってくる彼らが目にするのは、変わった王都なのか、それとも変わらぬ王都なのか。
その答えは、まだ誰にも分からない。
但し、一つだけ確かなことがある。
共闘という実績が、彼らの未来を確実に変えるということだ。




