第205話 総攻撃と突破
カオスナイトが弱体化している。
分身は消え、闇の領域は薄れ、動きも鈍くなった。
封印陣との繋がりが断たれた影響で、力の源を失っている。
だが、倒れない。
「核が残っている」
ユイが言った。
胸の中央、赤黒い結晶がまだ光を放っている。
「なら、直接砕く!」
レオンが叫び、駆け出す。
左足を引きずりながら、炎を纏った拳がカオスナイトに向かう。
3勢力が一斉に動いた。
17人全員が、一つの目標に向かっている。
レオンの炎がカオスナイトを焼く。
弱体化した今、炎は消されない。漆黒の鎧が、熱で赤く変色し始める。
セイラの氷が動きを封じる。
足元から這い上がる氷が、カオスナイトの脚を凍らせる。
セイラの顔は蒼白だった。それでも、氷を出し続ける。
ゼックが双剣で連撃を放つ。
「まだ錆びてないよ、俺は!」
軽口と共に、刃が閃く。
38歳の古参は、まだ現役だった。
ハンスとカイルが前衛で押す。
カイルは歯を食いしばりながら、大剣を振り下ろした。
「うおおおおっ!」
全身の力を込めた一撃が、カオスナイトの肩に叩きつけられる。
鎧が軋み、亀裂が走った。
ハンスの石の拳が、カオスナイトの腹部に叩き込まれる。
その一撃で、鎧の一部が砕けた。
だが、ハンスの左腕にも亀裂が走った。それでも、彼は笑っていた。
マーヴィンが重い一撃を叩き込む。
大剣が肩口を捉え、漆黒の鎧がさらに砕ける。
40代の重戦士は、若者に負けない力を見せていた。
アイリスとエルザが側面を突く。
アイリスの腕から血が滴り落ちている。それでも、投擲ナイフを放ち続ける。
ノアが正確に関節を狙い、矢で動きを制限する。
グレンとフィンが援護の炎を放つ。
リリアとセリスが後方から支援する。
二人とも魔力が尽きかけている。セリスは泣きながら、それでも杖を握り続けていた。
リリアは青ざめた顔で、それでも光魔法を放ち続けている。
ルークが負傷者の状態を確認しながら、声を上げた。
「あと少しだ! 核を砕け!」
全員が、限界を超えて戦っていた。
カオスナイトの鎧に、大きなひびが入った。
胸の中央、核を覆う部分の鎧が、崩れ始める。赤黒い結晶が、ついに露出した。
「今だ!」
ユイが叫ぶ。
核を狙う。
仲間が道を開けた。
レオンが左を押さえ、ゼックが右を牽制する。
カイルとハンスが正面を確保し、セイラの氷が足を固定している。
「ユイ、行け!」
レオンが叫んだ。
3位のリーダーが、最下位のリーダーに道を譲る瞬間だった。
プライドを捨て、勝利のために最善の選択をした。
ユイは風魔法で加速した。
体が軽くなり、一瞬で距離を詰める。
背中に激痛が走った。それでも、止まらない。
カオスナイトの懐に飛び込む。
胸の中央、核が見える。赤黒い光を放つ結晶。
カオスナイトが剣を振り下ろそうとする。
だが、全員が押さえている。
レオンが両腕を掴んでいた。
炎を纏った両手で、カオスナイトの剣腕を押さえつけている。左足が震えている。
ゼックが足を止めていた。
双剣を腿に突き刺し、動きを封じている。
軽い口調は消え、目だけが真剣だった。
セイラが氷で固定していた。
顔は蒼白だったが、それでも氷を出し続けている。
彼女の氷の装身具は、もう砕けかけていた。
「動けない」
ユイは短剣を握り締めた。
核が、目の前にある。
前世で、一人で砕いた存在。
あの時は、誰もいなかった。
暗い廃墟の中、一人で戦い、一人で勝った。
今は違う。
全員がここにいる。
傷だらけで、ボロボロで、限界を超えて。
それでも、一緒に戦っている。
その重さが、腕に伝わってくる。
仲間の体温。
仲間の息遣い。
仲間の意志。
全部が、ユイの背中を押している。
「これで、終わりだ」
ユイが短剣を振り上げた。
赤黒い結晶に向けて、刃が突き進む。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、
ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、とても励みになります。




