第204話 狙撃と崩壊
レオンの炎がカオスナイトを包む。
赤い炎が闇の中で燃え上がり、漆黒の鎧を焼こうとする。
だが、黒い大剣が一閃した瞬間、炎は消し飛ばされた。
闇のオーラが炎を飲み込み、無効化する。
「ちっ、やはりか」
レオンが舌打ちする。
弱体化しているとはいえ、幻モンスターの力は健在だ。
ゼックが側面から斬りかかった。
双剣が閃き、カオスナイトの脇腹を狙う。上段と下段、同時に二つの斬撃。
だが、両方とも弾かれた。
漆黒の鎧は、想像以上に硬い。
「おっと、硬いね」
ゼックが後退する。
だが、その動作には一切の無駄がなかった。
セイラの氷槍がカオスナイトの足元に突き刺さった。
氷が地面から広がり、足元を凍らせる。白い霜が這い上がり、脚を固定しようとする。
一瞬、動きが鈍った。
その隙を逃さず、エルザが影から飛び出す。
短剣が関節を狙う。だが、浅い。鎧の隙間に届かない。
「くっ……」
エルザが後退する。
体が重い。いつもの切れがない。
ユイが風刃斬を放った。
短剣に風を纏わせ、斬撃を飛ばす。
カオスナイトが剣で防いだ。
衝撃で、わずかに体勢が崩れる。
だが、すぐに反撃が来た。
黒い大剣が横薙ぎに振られる。全員が後退を余儀なくされた。
ユイは後退しながら、背中に激痛が走るのを感じた。
「今だ!」
ユイが叫ぶ。
同時に、廃墟の高台。
ノアが弓を構えていた。
灰色の瞳が、わずかに細められた。
封印陣の残骸。赤黒い光が脈打つ、あの場所。
アイリスが周囲を警戒している。腕の傷から、まだ血が滲んでいる。
ナオミが魔力を込める。
ノアの矢に、淡い光が宿り始めた。
「風を読んで。正確に当てて」
ノアの長弓が、限界まで引き絞られる。
弦が張り詰め、矢が光を帯びる。ナオミの魔力が、さらに上乗せされる。
「……見えた」
放つ。
矢は一直線に飛んだ。
風を切り、闇を貫き、廃墟の中央へ向かう。
カオスナイトが何かを感じた。
本能的に、危険を察知したのだろう。振り向こうとする。
だが、ユイが立ちはだかった。
「こっちを見ろ」
風刃斬が連続で放たれる。
背中の痛みを堪えながら、短剣を振る。
カオスナイトは防御に追われ、振り向けない。
レオンが炎を重ねる。左足を引きずりながら。
ゼックが斬りかかる。
セイラが足元を凍らせ続ける。顔が青ざめていく。
エルザが影から関節を狙い続ける。
第2隊全員が、カオスナイトの意識を引きつけていた。
その瞬間。
矢が封印陣の中央を貫いた。
光が弾けた。
陣が崩壊し、赤黒い光が四散する。
カオスナイトが絶叫した。
「ギャアアアアアッ!」
今まで聞いたことのない、苦悶の叫び。
核と封印陣の繋がりが断たれた瞬間だった。
闇の領域が揺らいだ。
分身たちが消え始める。
第1隊を追っていた分身が、霧散して消えた。
本体の両脇にいた2体も、同様に消滅する。
カオスナイトの体が、よろめいた。
漆黒の鎧に、細かい亀裂が走り始める。
「効いてる……!」
カイルの声が聞こえた。
第1隊が戻ってくる。だが、全員が息を切らしている。
カオスナイトはまだ立っていた。
核は健在。赤黒い結晶は、まだ光を放っている。
弱体化した。だが、倒れていない。
ノアが弓を下ろし、静かに呟いた。
「……終わっていない」
ナオミが額の汗を拭いながら、ノアの肩に手を置いた。
「よくやったわ。あの距離で、あの正確さ。さすがね」
「当然のことをしただけだ」
ノアの声には感情がない。だが、ナオミは小さく微笑んだ。
「よくやったわ。あとは、彼らに任せましょう」
高台から見下ろすと、第1隊が戻ってくるのが見えた。
カイルが息を切らしながら走っている。ハンスの石の体が軋みを上げている。
全員がボロボロだ。
だが、全員がまだ立っている。
ユイは短剣を構え直した。
手が震えている。背中の痛みが、さらに強くなっている。
それでも、止まらない。
ここからが、本番だ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、
ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、とても励みになります。




