第200話 3勢力集結
回復薬と魔力回復薬が効き始め、倒れていた者たちが次々と起き上がる。
だが、その動きは鈍い。誰もが顔を歪め、体のどこかを押さえている。
ユイは壁から体を離した。
立ち上がっただけで、足が震える。背中の痛みは消えていない。
ラスティの5人が、素早く廃墟の中に展開している。ゼックが前線を確認し、ノアが高所を探し、マーヴィンとルークが負傷者の状態を見ている。ナオミは全体回復の後、額の汗を拭いながらリリアとセリスのそばに膝をついていた。
カイルが体を起こし、周囲を見渡した。
「援軍……?」
「そういうこと」
ゼックが軽く手を振る。
「うわ、ひどい有様」
カイルの鎧は傷だらけで、盾は既に失われている。右腕を押さえながら立ち上がる姿は、痛々しかった。ハンスの石の体にも亀裂が走り、セイラは氷の装身具が半分砕けていた。
レオンが立ち上がった。
だが、左足を庇うように歩いている。
金色の瞳がゼックを捉え、低く唸るような声を出す。
「ラスティか。なぜここに」
「偶然だよ。北の森で別件中だったんだけど、すごい音が聞こえてさ」
「偶然だと?」
「信じなくてもいいよ。でも、助けに来たのは本当」
レオンは歯を食いしばった。
3位のリーダーとして、4位に助けられる屈辱。だが、今はそれを言っている場合ではない。
ノアがカオスナイトを観察していた。
弓を構えたまま、淡々と分析を口にする。
「本体は廃墟中央。分身が複数。領域は広い」
ナオミがリリアとセリスのそばにいた。
「魔力回復薬を飲んでも、この程度か……完全に枯渇していたのね」
リリアが師匠を見上げる。
氷洞で再会してから、ナオミがラスティに所属していることは知っている。だが、こうして戦場で師匠と並ぶのは初めてだった。
ルークが戦況を報告する。
「全員、最低限の行動は可能。だが、本調子には程遠い。回復薬で誤魔化してるだけだ」
「どのくらい持つ?」
ゼックが尋ねる。
ルークは少し考えてから、短く答えた。
「長くはない」
その言葉が、重くのしかかる。
ザークスはアイリスに支えられ、壁際に座っていた。
意識はあるが、立ち上がる力がない。顔色は青白く、呼吸も浅い。
レオンがザークスを見た。
副官の姿に、拳が震える。
「……すまない」
「気にしないでください、レオン様。私のことより、あれを倒すことを」
ザークスの声は弱々しいが、意志は揺らいでいなかった。
マーヴィンがハンスの隣に立った。
二人は無言で視線を交わし、小さく頷き合う。重戦士同士、言葉は不要だった。互いの傷を確認し、まだ戦えると伝え合う。
フィンが警戒の声を上げる。
「レオン様、あいつら信用できるんですか」
「黙れ。今は生き残ることだけ考えろ」
レオンの一喝に、フィンは口を閉じた。
グレンが炎を纏い、接近してきた分身を牽制する。
黒い影が後退し、距離が開く。分身たちは、まだこちらを狙っている。
ゼックがユイに近づいた。
「状況説明、頼む」
ユイは簡潔に説明した。
カオスナイトの能力。闘の領域。影の分身。魔力吸収。
そして、核と封印陣の繋がり。陣の残骸を破壊すれば、核にダメージが通ること。
「なるほどね」
ゼックが顎に手を当てる。
「つまり、陣を壊せば勝てる。でも、陣はあいつが守ってる」
「そうだ」
「で、あいつを止めながら陣を壊す必要がある」
「そうだ」
ゼックの目が、全員を見渡した。
クロウフォール8人。ブレイズウォール4人。ラスティ5人。
傷だらけで、疲弊している。
「……正直、厳しいね」
ゼックが小さく呟く。
「でも、やるしかない。逃げ道はないんだから」
その言葉に、全員が頷いた。
エルザが黒装束の埃を払いながら、無言で短剣を確認していた。
アイリスがザークスを支えながら、それでも明るい声を出す。
「大丈夫、まだやれるよ!」
その声に、全員が少しだけ表情を緩めた。
だが、状況は変わらない。
「で、誰が指揮を取る?」
ゼックの問いに、全員の視線が集まった。
この問いに、答えなければならない。
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