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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第24章 共闘

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第199話 錆びた救援

壁に叩きつけられた背中が痛む。

呼吸が浅い。指先の感覚が遠い。


ユイは廃墟の壁にもたれたまま、目の前の光景を見ていた。

カオスナイトは核に亀裂を入れられてもなお、立っている。赤い双眸が闇の中で揺らめき、黒い大剣が再び持ち上げられようとしている。


仲間たちは地面に倒れていた。

カイルもハンスもセイラも動けない。リリアとセリスは魔力を使い果たして意識が朦朧としている。レオンもフィンもグレンも吹き飛ばされたまま起き上がれていない。ザークスは重傷で、アイリスがその傍で守っている。


終わりか。

そう思った瞬間だった。


「おーい、まだ生きてるー?」


廃墟の入口から、軽い声が響いた。


ユイは首だけをそちらに向けた。

薄暗い入口に、影が立っている。


ぼさぼさの茶髪。無精髭。くたびれた革鎧。

腰には双剣を下げ、いつも少し笑っているような顔。


ゼック・アッシュ。

ラスティのリーダー格。ランキング4位のクラウン。


「いやー、嫌な予感がしたんだよね。北の森で別件の調査中だったんだけど、すごい音が聞こえてさ」


ゼックが廃墟の中に足を踏み入れる。

その後ろから、さらに4人の影が続いた。


黒い短髪に灰色の瞳、長弓を携えた細身の女性。ノア・クレイン。ラスティの現役エース。500メートル以上の長距離狙撃を得意とする。


銀髪に知的な雰囲気を纏った女性。ナオミ・シルヴァ。リリアの師匠。


フード付きマントの軽装の男。ルーク。斥候。


大柄で古い傷跡が刻まれた重装鎧の男。マーヴィン。重戦士。


ゼックがカオスナイトを見た。

一瞬だけ、その目が変わった。軽い笑みが消え、鋭い光が宿る。


「……あれ、幻モンスターじゃん。マジで」


声の調子は変わらない。だが、双剣に手をかける動作には一切の無駄がなかった。


マーヴィンが無言で大剣を抜く。

ルークが素早く周囲を確認し、低く報告した。


「出口は塞がれてる。闇の領域だ」


ノアが弓を構えたまま、淡々と答える。


「本体は1体。分身が複数。本体の位置は廃墟中央」


その時、ナオミが倒れているリリアを見つけた。

銀髪の女性の表情が、一瞬だけ揺れる。


「リリア……!」


「先生……!」


リリアが掠れた声で応える。

ナオミはすぐにリリアのそばに駆け寄り、状態を確認した。


「ひどい状態ね……全員、魔力も体力も限界を超えている」


ルークが素早くポーチから薬瓶を取り出した。


「回復薬と魔力回復薬、全部出す」


「私が全体回復をかける。その間に配って」


ナオミが杖を構えた。


ルークが倒れている者たちに駆け寄り、回復薬を口元に運び始める。ユイの元にも、赤い液体の入った小瓶が差し出された。


「飲め。動けるようになる」


ユイは震える手で瓶を受け取り、中身を飲み干した。

喉を通る液体が、体の奥に染み渡る。だが、傷が完全に癒えるわけではない。痛みが和らぐ程度だ。


同時に、ナオミが詠唱を始めた。


「癒しの光よ、この場に満ちよ」


銀色の光が廃墟に広がる。

柔らかな輝きが、倒れている全員を包み込んだ。


ユイは体に流れ込む魔力を感じた。

枯渇していた力が、わずかに戻る。立ち上がれる程度には。だが、万全とは程遠い。


「これで最低限は動ける。でも、長くは持たない」


ナオミの額に、汗が滲んでいた。全体回復は、術者への負担が大きい。


カイルが体を起こし、顔を歪めた。


「う……体中が痛い……」


「当然だ。骨にひびが入ってる。回復薬で誤魔化してるだけだ」


ルークが淡々と告げる。


リリアとセリスにも、魔力回復薬が渡された。

青い液体を飲み干すと、二人の目に少しだけ光が戻る。


「魔力が……少しだけ」


「でも、大きな魔法は無理です……」


ゼックがユイのそばに歩み寄った。

しゃがみ込み、軽い調子で言う。


「で、どうする? 逃げる? 戦う?」


ユイは壁に手をついて体を起こした。

足が震える。背中の痛みが、まだ残っている。


「戦う」


短く答える。


「勝ち筋が見えた」


ゼックの眉が上がった。


「へえ。この状況で?」


「核と封印陣が繋がっている。陣の残骸を破壊すれば、核にダメージが通る」


「なるほどね。それで、さっき核に傷つけたわけだ」


ゼックは立ち上がり、カオスナイトを見た。

胸の中央、赤黒い結晶に亀裂が走っているのが見える。


「ラスティ5人、追加だ。これで17人。ボロボロの12人と、俺たち5人」


ゼックの口元に、笑みが戻った。

だが、目だけは笑っていない。


カオスナイトが動いた。

黒い大剣が振り上げられ、闇のオーラが膨張する。


「来る」


ユイが短剣を抜く。

握る手に、まだ力が入りきらない。


「助太刀、頼まれてないけど来たよ」


ゼックが双剣を抜いた。


その目だけは、笑っていなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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