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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第23章 死線

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第198話 反撃の欠片

リリアが、光を放った。


弱々しい光だ。普段の彼女の魔法とは比べものにならない。セリスの魔力も合わせて、それでもこの程度。だが、その光は真っ直ぐに飛んだ。


封印陣の残骸へ向かって。


光が、陣に触れた。


瞬間、陣が輝き始めた。


微かだが、確実に。石畳の隙間から、光が溢れ出す。壊れたはずの魔法陣が、最後の力を振り絞るように光っている。かつてカオスナイトを封じていた力の残滓が、目覚めようとしている。


カオスナイトが、反応した。


光に気づいた。いや、それだけではない。核と陣の繋がりを通じて、何かを感じ取った。核が、不規則に脈打ち始めた。


カオスナイトが、光を吸収しようとした。


大剣を掲げ、闇を放つ。陣の光を、飲み込もうとする。ダークドメインが、封印陣の方向に集中していく。


その一瞬、動きが鈍った。


意識が、陣に向いている。ユイへの注意が、わずかに逸れている。


今だ。


ユイは、走り出した。


風魔法を発動する。残り僅かな魔力を、全て足に注ぎ込む。体が加速する。地面を蹴り、空気を切り裂く。痛みも疲労も、全て忘れた。


本体へ。核へ。


一直線に。


分身たちが、ユイを狙った。


闇の中から、二体の分身が飛び出してくる。大剣を振り上げ、ユイを斬り捨てようとする。本体を守ろうとしている。


だが、間に合わなかった。


「行け、ユイ!」


レオンが叫んだ。


レオンの体が、分身の前に立ちはだかった。炎は使えない。魔力は尽きている。だが、素手で分身を押さえている。ドラコニアの血が、最後の力を与えていた。歯を食いしばり、分身の剣を両手で受け止めている。


「任せて……ください……!」


カイルが、もう一体の分身に斬りかかった。大剣が、分身の剣を弾く。盾はない。右腕は負傷している。だが、体がある。仲間を守る意志がある。


ハンスが、ユイの背後を守った。石の巨体が、追撃してきた三体目の分身を阻む。拳で殴り、足で蹴り、全身で分身を押さえつけている。


セイラとエルザが、側面から牽制した。双剣と短剣が、分身の動きを鈍らせる。魔法は使えない。だが、剣術がある。暗殺者の技がある。


フィンとグレンも、残りの分身に立ち向かっていた。よろめきながら、それでも剣を振るっている。


全員が、ユイを守っている。


道を開いている。


ユイは、走り続けた。


カオスナイトの本体が、目の前にあった。


巨大な体。漆黒の鎧。赤い目。そして、胸の中心にある黒い核。幻モンスターの弱点。これを砕けば、終わる。


核が、脈打っている。封印陣の光と共鳴して、不規則に揺れている。普段より不安定だ。


今なら、届く。


ユイは短剣を振り上げた。


全ての力を込めて。18年の人生と、前世の38年の経験と、仲間たちの想いを乗せて。


短剣が、核に突き刺さった。


手応えがあった。硬い殻を貫いた感触。その奥にある、柔らかい核心に届いた感触。前世で感じたのと、同じ感触だ。


亀裂が、走った。


核に、細い亀裂が入った。黒い表面に、白い線が広がっていく。ひび割れが、核全体に広がっていく。


「砕けろ……!」


ユイは叫んだ。短剣を、さらに深く突き立てようとした。


だが。


完全には、砕けなかった。


核が、抵抗している。亀裂は入った。だが、まだ砕けていない。あと少し。あと少しの力が、足りない。18歳の体では、最後の一押しができない。


カオスナイトが、咆哮を上げた。


言葉にならない叫び。怒りと苦痛と、何かもっと深いものが混じった声。人だった頃の記憶が、蘇っているのかもしれない。


そして、最後のオーラを放った。


黒い波動が、爆発的に広がった。


ユイの体が、吹き飛ばされた。短剣が手から離れる。体が宙を舞い、壁に向かって飛んでいく。


「がっ……!」


背中が、壁に叩きつけられた。


激痛が走った。視界が歪む。息ができない。肺が潰れたかと思った。


地面に落ちた。うつ伏せに倒れる。起き上がろうとしたが、体が動かない。


仲間たちも、同様だった。


レオンが、吹き飛ばされていた。カイルも。ハンスも。セイラも。エルザも。フィンも。グレンも。全員が、地面に倒れている。


動ける者は、いない。


ユイは、顔を上げようとした。首が動かない。目だけで、カオスナイトを見た。


カオスナイトは、まだ立っていた。


核に亀裂が入っている。ダメージは与えた。だが、倒せていない。まだ、動いている。


「まだ……まだ終わってない……」


ユイは呟いた。


体に力を入れようとした。だが、動かない。指一本、動かせない。


カオスナイトが、ゆっくりとこちらを向いた。


赤い目が、ユイを見ている。怒りが、燃えている。


終わりだ。


今度こそ、本当に終わりだ。


その時、声が聞こえた。


廃墟の入口の方から。闇の向こうから。


「おーい、まだ生きてるー?」


軽い声だった。


場違いなほど、軽い声だった。


ユイは、その声に聞き覚えがあった。


第22章 完

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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