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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第23章 死線

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第197話 最後の賭け

ユイの声が、闇に響いた。


「全員、最後の力を貸してくれ」


倒れていた者たちが、顔を上げた。意識を失っていたはずのカイルが、目を開けた。ハンスが、重い体を起こそうとしている。リリアが、蒼白な顔でユイを見た。


「封印陣の残骸に、光魔法を当てろ」


ユイは、はっきりと言った。声に迷いはない。これが、最後の手段だ。


「な……何を……」


リリアが、かすれた声で問い返した。魔力が枯渇し、立つことすらできない状態だ。光魔法を放てと言われても、もう何も残っていない。


「封印陣と、カオスナイトの核は繋がっている。陣に光を当てれば、核に干渉できる」


「でも……私には、もう……」


「残りカスでいい。全員の力を集めれば、一発だけ撃てるはずだ」


ユイは、全員を見渡した。


「それでカオスナイトが弱体化する。動きが鈍る。その隙に、私が核を砕く」


誰も、反論しなかった。


できるのか。本当にうまくいくのか。その疑問は、全員の頭にあったはずだ。だが、誰も口にしなかった。


他に方法がないことを、全員が分かっていた。


「リリア」


ユイが呼んだ。


「……はい」


リリアが答えた。声は弱々しいが、目には決意があった。彼女はゆっくりと体を起こした。腕が震えている。だが、諦めてはいない。


「残った魔力を、全て集めろ。セリスも手伝え」


「分かり……ました……」


セリスが、這うようにリリアの傍に移動した。彼女も魔力が尽きかけている。だが、最後の回復魔法を、自分自身に施した。わずかでも、動けるようにするために。体に力が戻る。ほんの少しだけ。


「セイラ」


ユイが呼んだ。


セイラは答えなかった。ただ、ユイを見つめていた。


無言だが、その目には信頼があった。言葉は要らない。やれ。お前ならできる。その眼差しが、そう言っていた。


セイラは立ち上がった。双剣を構える。魔法は使えない。だが、剣はある。


「カイル、ハンス」


「はい……」


「……承知した」


二人が、体を起こした。カイルは負傷した腕を押さえながら、大剣を拾った。盾はもうない。だが、剣がある。守るべき仲間がいる。


ハンスは、亀裂だらけの体で立ち上がった。石の巨体が、ゆっくりと起き上がる。もう何度も倒れた。だが、まだ立てる。


「お前たちは、私の道を開けろ。分身が来たら、止めてくれ」


「任せてください……」


カイルが、弱々しく笑った。


「……任せろ」


ハンスが、低く答えた。


「レオン」


ユイが呼んだ。


レオンは、膝をついたまま顔を上げた。炎は消えている。魔力も尽きている。だが、その目には、まだ闘志が残っていた。ドラコニアの血が、諦めることを許さない。


「分かった。俺たちが本体を押さえる」


レオンが言った。傲慢な口調は消えていた。代わりに、静かな決意があった。


「フィン、グレン。動けるか」


「は、はい……!」


「ああ……」


二人が、よろめきながら立ち上がった。武器を構える。体は限界だが、戦う意志はある。レオンの部下として、最後まで付き従う。


エルザが、影から姿を現した。実体が薄れかけている。だが、まだ消えてはいない。


「……私も、やる」


短い言葉。だが、それで十分だった。


アイリスだけが、戦闘に参加できない。だが、彼女はザークスの傍にいた。重傷の彼を守るように。


ハンスが、ユイの傍に来た。


巨大な手が、ユイの肩に置かれた。石の手は冷たいはずなのに、温かく感じた。


「……行け」


それだけだった。だが、その一言に、全てが込められていた。信頼。託す思い。仲間としての絆。


ユイは、全員の決意を感じ取った。


誰も、諦めていない。


死が目の前にあっても、最後まで戦おうとしている。自分を信じて、命を預けようとしている。


「ありがとう」


ユイは、小さく言った。


そして、短剣を構えた。


「作戦開始」


リリアが、両手を伸ばした。


残った全ての魔力を、かき集める。体の隅々から、最後の一滴まで。セリスが、リリアの手を握った。彼女の魔力も、リリアに流し込む。


光が、集まり始めた。


弱々しい光だ。普段のリリアの光魔法とは比べものにならない。だが、確かに光っている。希望の光だ。


カオスナイトが、動いた。


光を感じ取ったのか。危険を察知したのか。大剣を振り上げ、リリアに向かって歩き出す。


「させない!」


カイルが、飛び出した。大剣を振り、カオスナイトの前に立ちはだかる。


ハンスも続いた。巨体で、カオスナイトの進路を塞ぐ。


レオン、フィン、グレンが、側面から攻撃を仕掛けた。魔法は使えない。だが、剣がある。拳がある。


セイラとエルザが、背後から牽制した。氷も影も、もう使えない。だが、短剣で斬りかかる。


全員が、時間を稼いでいる。


リリアが光を放つまで、カオスナイトを止めている。


「もう少し……!」


リリアが叫んだ。


光が、さらに集まる。セリスの魔力も、全て注ぎ込まれる。


「今だ!」


ユイが叫んだ。


リリアが、光を放った。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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