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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第23章 死線

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第192話 レオンの覚醒

怒りが、全身を焼いていた。


レオンはザークスを地面に横たえ、立ち上がった。手が震えている。血塗れの手。ザークスの血だ。


「殺してやる……!」


低い声が、喉から漏れた。


分身たちが、闇の中で待っている。赤い目が、こちらを見ている。まるで、次の獲物を選んでいるかのように。


許せなかった。


「殺してやる……!」


レオンの体から、炎が噴き出した。


制御していない。意識して放っているのではない。怒りが、そのまま炎になって溢れ出している。


「お前らを……全員……!」


炎が膨れ上がった。


今までとは、規模が違う。レオン自身を中心に、炎の渦が巻き起こる。熱風が闇を押し返し、周囲が赤く照らされた。


分身たちが、動いた。


レオンに向かって、一斉に襲いかかってくる。三体。いや、四体か。闇の中から、次々と現れる。


「来い……!」


レオンが叫んだ。


炎が、爆発的に放たれた。


分身たちを、まとめて飲み込んだ。赤い炎が、三体の分身を包み込む。分身たちは炎を吸収しようとした。だが、量が多すぎる。吸収が追いつかない。


「燃えろ! 燃え尽きろ!」


レオンが咆哮した。


炎の温度が、さらに上がった。白に近い赤。溶岩のような熱量。分身たちの動きが、止まった。


そして、消えた。


三体の分身が、炎の中で消滅した。闇が薄れ、視界が少しだけ開けた。


「まだだ……!」


レオンは周囲を見回した。


「どこだ! 本体はどこだ!」


分身を倒しても意味がない。本体を倒さなければ、終わらない。


だが、本体の姿が見えない。闇の奥に、気配はある。だが、どこにいるのか分からない。


「出てこい! 隠れてないで、出てこい!」


レオンが叫んだ。炎を放ち、闇を焼く。だが、闇は消えない。焼いても焼いても、すぐに闇が戻ってくる。


「くそっ……! どこだ……!」


冷静さを、完全に失っていた。


魔力が、急速に減っていく。暴走気味に炎を放ち続けている。このままでは、魔力が尽きる。分かっている。だが、止められない。


ザークスの顔が、脳裏に浮かんだ。


血塗れの顔。消えかけた眼光。微かな笑み。


「あなたは……強い……」


その言葉が、耳に残っている。


強い。強いはずだ。レオンは、王都でもトップクラスの戦闘力を持っている。ドラコニアの血を引く、炎の魔法使い。誰にも負けないはずだった。


なのに、部下を守れなかった。


「出てこい!」


レオンは再び叫んだ。炎を放つ。闇を焼く。だが、本体は現れない。


「レオン様!」


フィンの声が聞こえた。


「落ち着いてください! このままでは……!」


「黙れ!」


レオンが怒鳴った。


「お前は下がっていろ! ザークスを守れ!」


フィンは何か言おうとしたが、言葉を飲み込んだ。グレンが、フィンの肩を掴み、後ろに引いた。古参の部下は、今のレオンには何を言っても無駄だと分かっている。


レオンは炎を放ち続けた。


闘の中を、炎が走る。だが、本体には届かない。分身は倒せても、本体の居場所が分からない。


「どこだ……! どこにいる……!」


その時、声が聞こえた。


闇の向こうから。遠くから。だが、はっきりと聞こえた。


「落ち着け、レオン!」


ユイの声だった。


レオンは動きを止めた。


「ユイ……?」


「聞こえているか! 落ち着け!」


ユイの声が、闇を貫いて届いてくる。どこにいるのか分からない。だが、確かに聞こえる。


「怒りに任せたら、負ける!」


その言葉が、レオンの胸に突き刺さった。


怒りに任せたら、負ける。


分かっている。冷静さを失えば、判断を誤る。判断を誤れば、さらに仲間を失う。分かっている。


だが、止められなかった。


ザークスの姿が、目に焼き付いている。血塗れの体。消えかけた命。


「お前に……何が分かる……!」


レオンは叫んだ。


「お前に、部下を失う苦しみが分かるのか!」


返事はなかった。


沈黙が、闇の中に広がった。


レオンは荒い息をついていた。炎が、少しずつ弱まっていく。魔力の消耗が、限界に近づいている。


「……分かる」


ユイの声が、静かに響いた。


「分かるから、言っている。怒りに任せたら、負ける」


その声には、何かがあった。経験。痛み。レオンには分からない、何か深いもの。


「お前は……」


「今は戦え。怒りは、後で吐き出せ。今は、生き残ることだけを考えろ」


ユイの言葉が、レオンを現実に引き戻した。


そうだ。まだ終わっていない。ザークスは、まだ死んでいない。フィンもグレンも、生きている。


守らなければならない。


怒りを、押し殺した。


「……分かった」


レオンは、低く答えた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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