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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第22章 封印解除

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第185話 撤退不可

ユイは決断した。

 

「撤退する!」

 

全員に向かって叫んだ。このまま戦い続けても、消耗するだけだ。カイルは負傷し、魔法は通じず、分身の数は減らない。勝ち目がない。

 

「撤退だと!」

 

レオンが怒鳴った。

 

「逃げるのか!」

 

「死ぬよりましだ! 態勢を立て直す!」

 

ユイは言い返した。

 

「全員、出口に向かえ! 戦闘は最小限に! 分身を振り切ることだけを考えろ!」

 

仲間たちが動き始めた。ハンスが石壁で分身を足止めし、その隙にセリスがカイルを支えて後退する。セイラとエルザが側面を守り、リリアとアイリスが後方を警戒する。

 

ブレイズウォールも撤退を始めた。レオンは不満そうだったが、ザークスとフィン、グレンが彼を促した。

 

「レオン様、今は退くべきです」

 

ザークスが言った。

 

「くそっ……!」

 

レオンは舌打ちしながらも、後退を始めた。

 

大広間から通路へ。来た道を戻り、廃墟の入口を目指す。

 

だが、すぐに異変に気づいた。

 

「出口が……」

 

アイリスが声を上げた。

 

通路の先が、見えない。闇に覆われている。

 

ダークドメインが、広がっていた。

 

ユイは足を止めた。振り返る。大広間の方向も、闇に包まれている。前も後ろも、完全な暗黒。

 

「閉じ込められている……」

 

ユイは呟いた。

 

ダークドメインの範囲は、半径20メートルのはずだった。だが、今は違う。廃墟全体が、闇に覆われている。カオスナイトの力が、前世をはるかに超えている。

 

「出口が見えない!」

 

フィンが叫んだ。

 

「どっちに行けばいい!」

 

グレンが周囲を見回した。だが、どの方向も同じ闇だ。方向感覚が、完全に失われている。

 

「壁に沿って進め!」

 

ユイが命じた。

 

「壁伝いに行けば、出口に辿り着ける!」

 

だが、その言葉を言い終わる前に、前方から気配が迫った。

 

分身だ。

 

撤退を阻むように、分身が通路を塞いでいる。

 

「前方に3体!」

 

セイラが叫んだ。

 

「後方にも来ます!」

 

リリアが警告した。

 

前後を挟まれた。逃げ道がない。

 

「横は!」

 

「壁ですわ! 道はありません!」

 

リリアが答えた。

 

完全に包囲されている。分身たちが、ゆっくりと距離を詰めてくる。逃げ場がない。戦うしかない。だが、戦っても勝てない。

 

ユイの頭の中で、思考が渦巻いた。

 

なぜだ。なぜこうなった。

 

前世では、カオスナイトから逃げることができた。ダークドメインの範囲外に出れば、闇は追ってこなかった。だが、今回は違う。領域が広すぎる。どこまで逃げても、闇の中だ。

 

「逃がす気がない……」

 

ユイは悟った。

 

カオスナイトは完全に覚醒している。封印から解放され、本来の力を取り戻した。いや、それ以上だ。封印されていた間に蓄えた力が、上乗せされている。

 

前世で戦った個体は、目覚めたばかりだった。力を蓄える時間がなかった。だから、あの程度で済んだ。

 

今回は違う。何十年も、あるいは百年以上も、封印の中で力を溜め込んでいた。その全てが、今、解き放たれている。

 

「勝てない……」

 

ユイの口から、言葉が漏れた。

 

「何を言っている!」

 

レオンが怒鳴った。

 

「諦めるのか!」

 

「諦めてない」

 

ユイは首を振った。

 

「だが、現実を見ろ。今の状態では、勝てない」

 

「なら、どうする!」

 

「分からない」

 

ユイは正直に答えた。

 

「分からない。だが、考える。考えて、答えを見つける」

 

分身たちが、さらに近づいてきた。10体が、11人を完全に包囲している。

 

「時間がない!」

 

ザークスが叫んだ。

 

「考えている暇は!」

 

「分かっている!」

 

ユイは短剣を構えた。

 

退路はない。戦うしかなかった。

 

だが、どうやって。

 

答えが、見つからない。

 

分身たちが、一斉に剣を構えた。

 

ユイは仲間たちを見回した。カイルは負傷し、セリスに支えられている。リリアは魔力を消耗し、顔が青白い。ハンスの石壁は何度も砕かれ、彼の体にも疲労が見える。セイラ、エルザ、アイリスも、消耗が激しい。

 

ブレイズウォールも同様だった。レオンは怒りで身を震わせているが、その炎は先ほどより弱い。ザークスは冷静を保とうとしているが、表情に焦りが滲んでいる。フィンとグレンは、もう限界に近い。

 

全員が、限界に近づいている。

 

このまま戦えば、全滅する。

 

だが、戦わなければ、その場で殺される。

 

どちらを選んでも、結末は同じだ。

 

退路はない。

 

戦うしかなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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