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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第22章 封印解除

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第184話 最初の負傷者  

剣が振り下ろされる。

 

ユイの目に、闇を纏った刃が映った。回避が間に合わない。体が動かない。

 

死ぬ。

 

その確信が、頭を過ぎった瞬間だった。

 

「ユイさん!」

 

カイルが飛び込んできた。盾を構え、ユイの前に立ちはだかる。分身の剣が、カイルの盾に激突した。

 

轟音。

 

金属が軋み、火花が散った。衝撃がカイルの体を貫き、彼の足が地面を削る。それでも、カイルは踏みとどまった。両腕で盾を支え、全身の力で剣を受け止めている。

 

だが、分身の力は人間の限界を超えていた。

 

カイルの体が、吹き飛んだ。

 

盾ごと弾き飛ばされ、後方の壁に叩きつけられる。鈍い音が響き、カイルの体が崩れ落ちた。

 

「カイル!」

 

ユイが叫んだ。

 

カイルは倒れたまま動かない。その腕から、血が流れていた。盾を持っていた左腕。肘から先が、不自然な角度に曲がっている。

 

骨が折れた。

 

盾は砕けていた。カイルが誇りにしていた銀色の盾。それが、無残な破片となって床に散らばっている。

 

「カイル! しっかりして!」

 

セリスが駆け寄った。両手を翳し、回復魔法を発動する。淡い光がカイルの体を包み、傷口を塞ごうとする。

 

だが、カオスナイトは止まらなかった。

 

分身の一体が、セリスに向かって剣を振り上げた。

 

「セリス!」

 

リリアが叫んだ。光魔法を放ち、分身の動きを一瞬だけ止める。その隙に、エルザがセリスを引っ張り、後方に退避させた。

 

「回復を続けて!」

 

エルザが言った。短剣を構え、セリスを守る位置に立つ。

 

「私が守る」

 

セリスは頷き、再びカイルの治療に集中した。回復魔法の光が、カイルの腕を包む。だが、骨折の治療には時間がかかる。

 

「カイル、しっかり……!」

 

セリスの声が震えていた。

 

カイルが、薄く目を開けた。

 

「ユイ、さん……無事、ですか……」

 

「喋るな。治療に集中しろ」

 

ユイが傍に膝をついた。カイルの顔は青白く、額に汗が浮かんでいる。

 

「すみません……盾、壊れちゃいました……」

 

「いい。お前が生きていれば、それでいい」

 

ユイはカイルの肩に手を置いた。だが、すぐに立ち上がらなければならなかった。分身たちが、再び動き始めている。

 

「ハンス、ここを守れ! セリスの治療が終わるまで!」

 

「了解」

 

ハンスが前に出た。石壁を展開し、カイルとセリスを守る。

 

ユイは短剣を構え、分身たちに向き直った。

 

レオンが炎を放っていた。分身に向けて、全力の炎魔法。赤い炎が闇を照らし、分身の体を包む。

 

「燃えろ!」

 

レオンが叫んだ。

 

炎が分身を焼く。だが、分身は止まらない。炎を纏ったまま、レオンに向かって剣を振る。レオンが後退し、拳で剣を弾く。だが、反動で自分の体も後ろに下がる。

 

「効いていない……!」

 

フィンが叫んだ。

 

「炎が効かない……!」

 

グレンが呻いた。

 

ブレイズウォールの主力である炎魔法が、全く通用していない。分身は炎を吸収し、それを自らの力に変えている。攻撃すればするほど、敵が強くなる。

 

「物理も魔法も、通じない……?」

 

ユイは呟いた。

 

物理攻撃は弾かれる。魔法攻撃は吸収される。どちらも、ダメージを与えられない。

 

では、どうすればいい。

 

答えが見つからない。

 

セイラが氷魔法を放った。氷槍が分身に向かって飛ぶ。だが、分身は剣で氷槍を砕いた。破片が飛び散り、何の効果も残さない。

 

「氷も駄目か……」

 

セイラが舌打ちした。

 

アイリスが周囲を飛び回り、分身の注意を引こうとしていた。だが、分身は彼女を無視している。脅威と見なされていない。

 

「どうすれば……」

 

アイリスの声が、小さく響いた。

 

リリアが再び光魔法を放った。分身の動きが、一瞬だけ鈍る。だが、すぐに回復する。光の効果は、ほんの一瞬だ。

 

「持続しませんわ……!」

 

リリアが叫んだ。

 

「光を当て続けても、すぐに闇に飲み込まれます……!」

 

全ての攻撃が、通じない。物理も、魔法も、光も。

 

カオスナイトは、完全に覚醒していた。封印から解放され、蓄えた力を全て解き放っている。今の彼は、ユイが前世で戦った個体とは比較にならない。

 

「くそっ……」

 

レオンが吠えた。

 

「どうすればいい! 何をすれば倒せる!」

 

その問いに、ユイは答えられなかった。

 

分身たちが、再び攻撃態勢を取った。10体が、生き残った全員を囲んでいる。

 

逃げ場がない。

 

勝ち筋が、見えない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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