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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第22章 封印解除

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第180話 完全解放

カオスナイトが、完全に顕現した。

 

以前、みんなで見た姿だった。前回遭遇した時と同じ、闇を纏った騎士の姿。だが、何かが違う。あの時は、まだ封印の中にいた。完全には覚醒していなかった。

 

今は違う。

 

存在感が、桁違いに増している。

 

身長は約3メートル。人間の倍近い巨躯だ。だが、それ以上に大きく感じる。視界に入っているだけで、圧迫感がある。息苦しい。胸を押さえつけられているような重圧が、大広間全体を支配していた。

 

空気が、震えている。

 

カオスナイトが一呼吸するたびに、闇が脈打つ。その存在そのものが、周囲の空間を歪めているかのようだった。

 

「これが……」

 

レオンが呻くように言った。

 

「幻モンスター」

 

その声には、普段の傲慢さがなかった。初めて見る本物の脅威に、レオンですら言葉を失っている。

 

フィンは剣を構えたまま、一歩も動けなかった。グレンの炎が、僅かに揺らいでいる。ザークスは冷静を保とうとしているが、額に汗が浮かんでいた。

 

クロウフォールの仲間たちも同様だった。カイルの盾を持つ手が震えている。リリアは杖を握り締め、青白い顔で陣を見つめていた。セリスは両手を胸の前で組み、祈るような姿勢で立ち尽くしている。

 

ハンスだけが、無言で前に出た。ゴーレムの彼には、恐怖という感情が薄いのかもしれない。それでも、その動きはいつもより慎重だった。

 

ユイは、息を呑んだ。

 

違う。

 

前世で戦った時より、明らかに強い。

 

あの時のカオスナイトも、圧倒的な存在だった。闇の領域で視界を奪い、分身で翻弄し、魔力を吸収して回復する。一人で戦い、何度も死にかけ、辛うじて勝利した。

 

だが、目の前のカオスナイトは、あの時の個体を超えている。

 

纏っている闇の濃さが違う。放っている威圧感が違う。存在そのものの密度が、段違いに高い。

 

なぜだ。

 

ユイは考えた。同じカオスナイトのはずだ。幻モンスターは討伐されても数年で蘇る。だが、個体としての強さは変わらないはずだった。

 

封印。

 

その言葉が、頭に浮かんだ。

 

「封印が長かった分、力を蓄えていた……?」

 

ユイは呟いた。

 

リリアが言っていた。封印は古い。数十年、あるいは百年以上。その間、カオスナイトは封印の中で眠っていた。だが、眠っていただけではなかった。力を溜め込んでいた。封印という檻の中で、ひたすらに。

 

解放された今、その蓄積された力が、全て解き放たれている。

 

「まずい」

 

ユイの声は、自分でも驚くほど小さかった。

 

カオスナイトが動いた。

 

首を巡らせ、大広間にいる全員を見渡す。深紅の双眸が、一人一人を捉えていく。品定めをするように。あるいは、殺す順番を決めるように。

 

その視線がユイで止まった。

 

一瞬、時間が止まったように感じた。深紅の光が、ユイを射抜いている。他の誰でもない。ユイだけを見ている。

 

何かを感じ取ったのか。前世で戦った記憶が、魂に刻まれているのか。それとも、単なる偶然か。

 

分からない。だが、カオスナイトは確かにユイを認識していた。

 

「ユイさん……」

 

カイルが囁いた。

 

「動くな」

 

ユイは答えた。声を押し殺して、仲間たちに指示を出す。

 

「まだ動くな。相手の出方を見る」

 

「見てどうする」

 

レオンが低く言った。

 

「先手を取らないのか」

 

「取れない。今動けば、全員死ぬ」

 

ユイは断言した。

 

カオスナイトの視線が、ユイから外れた。再び全員を見渡し、それから正面を向いた。

 

そして、一歩を踏み出した。

 

地面が揺れた。たった一歩で、大広間全体が軋む。重厚な足音が、石の床を打つ。闇が揺らめき、カオスナイトの周囲に渦を巻いた。

 

「来る」

 

セイラが呟いた。双剣を構え、いつでも動けるように腰を落とす。

 

「全員、散開しろ」

 

ユイが命じた。

 

「正面から受けるな。側面に回れ。攻撃は私の合図で」

 

「合図?」

 

「まだだ。まだ攻撃するな」

 

ユイは繰り返した。

 

カオスナイトが、さらに一歩を踏み出した。闇が広がり、大広間の明かりが薄れていく。リリアの光魔法が、押し返されている。

 

「ユイ」

 

レオンが叫んだ。

 

「いつまで待つ!」

 

「まだだ」

 

ユイは答えた。

 

だが、心の中では別のことを考えていた。

 

勝てるのか。

 

この相手に、勝てるのか。

 

前世で戦った個体より、確実に強い。今の自分たちの戦力で、本当に勝てるのか。

 

カオスナイトが、剣を持ち上げた。闇のオーラを纏った巨大な剣。それが、ゆっくりと構えられる。

 

戦いが、始まろうとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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