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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第21章 遺跡の違和感

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第169話 北への道

王都ティリアスの北門を抜けると、街道が真っ直ぐに伸びていた。

 

クロウフォールの8人は、隊列を組んで進む。

 

先頭はユイとカイル。前衛として周囲を警戒しながら歩く。その後ろにセイラとエルザ。中衛として左右に目を配る。さらに後方にリリアとセリス。支援と回復を担う二人は、常に全体を見渡せる位置にいた。最後尾はハンスとアイリス。ハンスの巨体が背後からの奇襲を防ぎ、アイリスが上空から周囲を偵察する。

 

街道沿いには、まばらに旅人の姿があった。商人の馬車、巡回の兵士、他の冒険者たち。だが、北へ向かう者は少ない。

 

「ユイさん」

 

カイルが声をかけてきた。

 

「何だ」

 

「ブレイズウォールと鉢合わせしたら、どうしますか」

 

「……避ける」

 

ユイは短く答えた。

 

「今は争う時じゃない」

 

「でも、向こうが仕掛けてきたら……」

 

「その時は対応する。だが、こちらからは仕掛けない」

 

カイルは頷いた。

 

「分かりました。俺も、できれば戦いたくないです」

 

「……同感だ」

 

後方から、セイラの声が聞こえた。

 

「……あいつら、何を調べに行ったんだ」

 

「異常調査という依頼内容でしたわ」

 

リリアが答える。

 

「私たちと同じです。ただ、目的が違うようですが」

 

「目的?」

 

「レオン・ドラグナーは『排除』と言っていました。異常があれば、力で解決する。それが彼らのやり方なのでしょう」

 

「……単純だな」

 

セイラが呟いた。

 

「単純ですが、効果的ではありますわ」

 

リリアの声には、わずかな皮肉が混じっていた。

 

「3位のクラウンとして評価されているのは、その実績があるからです。討伐数、成功率、どちらも王都トップクラス」

 

「でも、それだけじゃ……」

 

セリスが口を挟んだ。

 

「原因を調べないと、また同じことが起きませんか?」

 

「その通りですわ」

 

リリアが頷いた。

 

「だから私たちは、原因を突き止めに行く。排除ではなく、理解のために」

 

ユイは黙って聞いていた。

 

リリアの言葉は正しい。だが、ユイには別の理由があった。

 

北の森。あの廃墟。以前、撤退を選んだ場所。

 

あの時感じた気配。異様な圧力。そして、セイラが口にした「見られている」という感覚。

 

答えは、あの場所にある。

 

街道を進むにつれ、周囲の景色が変わっていった。

 

畑や牧草地が減り、木々が増える。道幅も狭くなり、馬車とすれ違うのがやっとになった。

 

「もうすぐ森だよ」

 

アイリスが上空から声をかけた。

 

「先に誰かいる?」

 

「見えないかも。木が多くて」

 

「……了解」

 

ユイは足を速めた。

 

やがて、街道が森の中へ入っていく。

 

木々が頭上を覆い、日差しが遮られた。空気が、ひんやりと変わる。

 

「……静かだな」

 

エルザが呟いた。

 

その言葉に、ユイは足を止めた。

 

静か。

 

確かに、静かだ。

 

だが、それは心地よい静けさではなかった。

 

鳥の声がない。

 

虫の音もない。

 

風が木々を揺らす音だけが、森を満たしている。

 

「……前に来た時と、同じだ」

 

セイラが低く言った。

 

「この感じ。覚えている」

 

ユイは頷いた。

 

以前、この森を訪れた時も同じだった。生き物の気配が消え、静寂だけが残る。まるで、何かが森全体を支配しているかのような。

 

「警戒を強めろ」

 

ユイの声に、全員が頷いた。

 

隊列が引き締まる。カイルが盾を構え、エルザが影に溶け込むように気配を消した。セイラの手には、いつの間にか氷の粒子が漂っている。

 

「アイリス」

 

「分かってる」

 

アイリスが木々の間を縫うように飛び、前方を偵察に向かった。

 

残りの7人は、慎重に森の中を進む。

 

足元の落ち葉が、乾いた音を立てる。それ以外には、何の音もしなかった。

 

ユイは周囲を見回した。

 

木々は普通に見える。枯れているわけでも、異常があるわけでもない。だが、生き物がいない。

 

この不自然さ。

 

何かが、ここにいる。

 

あるいは、何かが近づいている。

 

「ユイさん」

 

カイルが小声で言った。

 

「嫌な感じがします」

 

「……ああ」

 

ユイは前を見据えた。

 

「だが、進む」

 

答えは、この先にある。

 

引き返すつもりはなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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