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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第21章 遺跡の違和感

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第167話 依頼の重複

朝のギルドは、いつもより人が多かった。

 

受付前には冒険者たちが列を作り、掲示板の周りにも数人が集まっている。ユイは仲間たちと共に入口をくぐり、その喧騒を眺めた。

 

「今日は賑わってますね」

 

カイルが周囲を見回しながら言う。

 

「新しい依頼が出たみたいだよ」

 

アイリスが羽をはためかせ、掲示板の方を指した。彼女の情報収集能力は相変わらず早い。ギルドに入る前から、何かを掴んでいたのだろう。

 

ユイは黙って掲示板へ向かった。

 

人混みの隙間から、新しく貼られた羊皮紙が見える。他の依頼書より一回り大きく、目立つ位置に掲示されていた。

 

北の森周辺の異常調査。

 

報酬は金貨50枚。通常の調査依頼の3倍以上だ。

 

だが、詳細の欄には「現地にて確認」とだけ書かれている。

 

「報酬が高いですわね」

 

リリアが隣に立ち、依頼書を読み上げた。

 

「ですが、情報が少なすぎます。何の異常なのか、依頼主が誰なのかも明記されていませんわ」

 

「怪しいっちゃ怪しいよね」

 

アイリスが首を傾げる。

 

「でも、北の森って言ったら……」

 

その言葉に、ユイは小さく頷いた。

 

北の森。以前、クロウフォールが調査に向かい、撤退を余儀なくされた場所だ。あの時はカオスナイトと遭遇し、撤退戦を行った。全員が命からがら逃げ延びた。

 

「……戻る理由ができた」

 

ユイは静かに言った。

 

謎を追う。答えを探す。最下位だからこそ、誰も注目しない場所で動ける。この依頼は、その方針に合致している。

 

「受けるんですか?」

 

カイルが確認するように問う。

 

「ああ」

 

「了解です! 任せてください!」

 

カイルが力強く応じた。

 

「……妥当だ」

 

セイラが短く同意する。彼女もまた、北の森で何かを感じ取っていた。あの時の「見られている」という感覚を、セイラは今も覚えているはずだ。

 

「私も賛成ですわ。以前の調査では奥まで入れませんでしたもの」

 

リリアが頷く。

 

「あの時は撤退したけど、今なら……」

 

アイリスの言葉に、エルザが静かに続けた。

 

「……準備は、できている」

 

ハンスが無言で頷く。セリスも小さく拳を握った。

 

「頑張りましょう!」

 

8人の意思が揃った。

 

ユイは依頼書に手を伸ばした。羊皮紙の端を掴み、掲示板から外そうとする。

 

その瞬間だった。

 

「その依頼、俺たちも狙ってるんだが」

 

低い声が、背後から響いた。

 

ユイの手が止まる。

 

振り返ると、赤みがかった髪の男が立っていた。鋭い金色の瞳。胸元には炎を模した紋章。

 

レオン・ドラグナー。

 

世界クラウンランキング3位、ブレイズウォールのリーダーだ。

 

その背後には、3人の仲間が控えている。短い黒髪の副官ザークス、金髪の若い戦士フィン、黒髪で無精髭のグレン。

 

ギルド内の空気が、一瞬で変わった。

 

周囲の冒険者たちが道を開け、遠巻きに様子を窺っている。3位のクラウンと最下位のクラウン。その対比は、誰の目にも明らかだった。

 

「……レオン・ドラグナー」

 

ユイは静かに名を呼んだ。

 

「覚えていたか、最下位」

 

レオンの口元に、わずかな笑みが浮かぶ。だが、その目は笑っていない。

 

「前に会った時は挨拶だけだったな。今日は違う」

 

彼の視線が、ユイの手にある依頼書へ向けられた。

 

「北の森の異常調査。俺たちも受けるつもりだ」

 

「……そうか」

 

ユイは短く応じた。

 

「先に手を伸ばしたのは俺たちだ。譲る気はない」

 

「譲れとは言っていない」

 

レオンが一歩近づく。

 

「だが、邪魔はするなよ。最下位が足を引っ張ると、面倒だ」

 

カイルが前に出ようとした。ユイが片手でそれを制する。

 

「……邪魔をするつもりはない」

 

「なら問題ない」

 

レオンはそう言って、視線をユイから外さなかった。

 

「だが、一つ聞いておく」

 

「何だ」

 

「お前たち、なぜこの依頼を選んだ」

 

ユイは答えなかった。

 

沈黙が流れる。周囲の視線が二人に集まる中、レオンは小さく鼻を鳴らした。

 

「答えない、か。まあいい」

 

彼は踵を返した。

 

「ザークス、受付で手続きを済ませろ。俺たちは先に出る」

 

「かしこまりました、レオン様」

 

ザークスが一礼し、受付へ向かう。

 

レオンは去り際、肩越しに振り返った。

 

「最下位。また会うことになりそうだな」

 

その言葉を残し、ブレイズウォールはギルドを出て行った。

 

静まり返っていたギルド内に、少しずつざわめきが戻る。

 

「……あいつ、何様だよ」

 

アイリスが小声で呟いた。

 

「3位のクラウンですわ。実力は本物です」

 

リリアが冷静に答える。

 

「でも、態度がでかすぎません?」

 

セリスが眉を寄せた。

 

ユイは依頼書を見つめていた。

 

同じ場所。同じ依頼。偶然とは思えなかった。

 

北の森で何かが起きている。それを察知しているのは、クロウフォールだけではない。

 

「……行くぞ」

 

ユイは依頼書を手に、受付へ向かった。

 

ブレイズウォールが先に出発した。だが、それは問題ではない。

 

重要なのは、あの森で何が起きているのか。

 

そして、なぜ今、この依頼が出されたのか。

 

答えは、現地にある。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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