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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第20章 最下位の名前

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第164話 掲示板の前

冒険者ギルドの中央広場。


大きな掲示板が立っていた。木製の枠に、羊皮紙が何枚も貼り付けられている。


「世界クラウンランキング」


ユイは掲示板の前に立った。


3ヶ月ごとに更新される公式ランキング。クラウンの活動実績を数値化し、順位を決める。戦闘実績、貢献度、危険地帯調査、情報提供、未知脅威対応。5つの評価軸で合計500点満点。


上から順に目を通す。


1位。アイアンクロス。王都ティリアス。王都最古参にして最大規模。戦闘実績と貢献度で圧倒的な首位を維持している。


2位。シルバーファング。拠点不明。幻モンスターと封印の調査に特化した謎のクラウン。情報提供と危険地帯調査の得点が断トツ。


3位。ブレイズウォール。王都ティリアス。純粋な戦闘力特化の荒くれ集団。戦闘実績だけで3位を維持している。


4位。ラスティ。王都ティリアス。老舗クラウン。王都裏の情報網と独自ルートを持つ。


5位。グリーンヴェイン。エルフラン森林都市。自然魔法と治癒に長けたエルフのクラウン。


6位。フレイムスパイク。ドラゴニア山脈。炎属性と空中戦に特化したドラコニアの集団。


7位。ナイトシャドウ。ナイトフォール峡谷。諜報と暗殺に特化。シャドウキンで構成されている。


8位。スカイウィング。フェアリス・フライア空中都市。空中偵察と機動力に特化。


9位。ストーンフォート。地下都市・岩山地帯。拠点防衛と要塞戦に特化。ドワーフとゴーレムで構成。


そして。


最下位。クロウフォール。王都ティリアス。


ユイは自分たちの名前を見つめた。


評価は5項目すべてで最低圏。戦闘実績はほぼゼロ。貢献度もゼロ。危険地帯調査と未知脅威対応にわずかな点数が付いているが、それでも最下位だった。


「これが、今の俺たちの位置か」


低く呟く。


「おい」


背後から声がかかった。


重い足音。複数。ユイは振り返った。


3人の男たちが立っていた。先頭の男は大柄で、肩幅が広い。赤みがかった髪と、鋭い金色の瞳。胸元には炎を模した紋章。


ブレイズウォール。


3位のクラウンだ。


「お前か。クロウフォールのリーダー」


先頭の男が言った。声は低く、威圧感がある。


「そうだ」


「俺はレオン・ドラグナー。ブレイズウォールのリーダーだ」


レオン・ドラグナー。ドラコニアの血を引く戦士。3位クラウンを率いる男。前世でも名前を聞いたことがある。純粋な戦闘力なら、王都でも指折りの実力者だ。


「知っている」


「知っている、だと?」


レオンの目が細くなる。


「最下位のくせに、俺を知っているのか」


「3位のクラウンのリーダーだ。知らない方がおかしい」


レオンの後ろにいた男たちが、低く笑った。


「口だけは達者だな」


「最下位なのに、態度だけは一人前だ」


レオンが手を上げ、仲間を黙らせた。


「お前、名前は」


「ユイ・セイラス」


「ユイ・セイラス」


レオンが名前を繰り返した。品定めするような視線がユイを上から下まで舐める。


「女か。しかも若い。18か19か」


「18だ」


「18で最下位のクラウンのリーダー。笑わせる」


「笑えばいい」


ユイは表情を変えなかった。


レオンの笑みが、わずかに消える。


「反論しないのか」


「事実だからな。最下位なのは」


「開き直りか」


「違う」


ユイは掲示板を指差した。


「ランキングを見ろ。9つのクラウンが並んでいる。王都だけじゃない。エルフラン、ドラゴニア山脈、ナイトフォール峡谷、空中都市、地下都市。世界中のクラウンが評価されている」


「だから何だ」


「俺たちは結成したばかりだ。実績がないのは当然だ。だが、それがどうした」


レオンが一歩前に出た。


「最下位が偉そうに語るな」


「偉そうにしているつもりはない」


「じゃあ何だ」


「事実を言っているだけだ。ランキングの順位を上げることが、俺たちの目的じゃない」


レオンの目が鋭くなる。


「目的じゃない、だと?」


「お前たちは戦闘実績で3位を維持している。純粋な戦闘力で勝負している。それは正しい」


「当然だ」


「俺たちの目的は違う。だから、評価軸も違う」


「何が目的だ」


「言う必要はない」


レオンの顔が歪んだ。


周囲の空気が張り詰める。ギルドのホールにいた冒険者たちが、こちらを見ている。最下位のクラウンと、3位のクラウン。誰もが、この場の緊張に気づいていた。


レオンが低く唸った。


「お前、度胸だけはあるな」


「そうか」


「普通なら、俺の前で目を逸らす。最下位のリーダーが3位のリーダーに睨まれたら、大抵は震える」


「震える理由がない」


「理由がない、か」


レオンがユイを見つめた。


長い沈黙。


やがて、レオンが小さく笑った。


「面白い」


「何が」


「お前の目だ。弱者の目じゃない」


ユイは答えなかった。


レオンが踵を返す。


「覚えておく。ユイ・セイラス」


「覚えなくていい」


「いや、覚える」


レオンは振り返らずに言った。


「最下位のくせに、俺を見上げなかった奴は初めてだ」


仲間と共に去っていく。足音が遠ざかる。


ユイはその背中を見送り、再び掲示板を見た。


最下位。クロウフォール。


見下された。だが、それでいい。


「最下位だから、見える」


低く呟く。


最下位のクラウンを、誰も警戒しない。誰も注目しない。


だからこそ、自由に動ける。


空白の地点への遠征。15本の柱。シャドウ・ヴェールの痕跡。あの調査を誰にも邪魔されずに行えたのは、クロウフォールが最下位だったからだ。


上位のクラウンは常に監視されている。アイアンクロスが動けばギルドが反応する。ブレイズウォールが依頼を受ければ他のクラウンも注目する。


だが、最下位は違う。


誰も見ていない。誰も気にしない。


「弱いと思われている」


それは、武器になる。


掲示板の最下位に並べられた「クロウフォール」という名前。誰もがまず見て、次に「弱い」と判断する。だから、見える。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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