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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第20章 最下位の名前

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第163話 帰路の会話

王都に戻ったのは、日が落ちてからだった。


拠点の扉を開けると、馴染んだ空気が迎える。8人が順に中へ入り、荷物を下ろした。


「食事にしよう」


ユイが言った。


食堂に全員が集まる。セリスとリリアが簡単な料理を用意し、テーブルに並べた。パンと干し肉、温かいスープ。質素だが、遠征帰りには十分だった。


しばらく、誰も口を開かなかった。


食べながら、それぞれが考えている。15本の柱。読めない文字。消えた冒険者たち。そして、白紙の紙。


カイルが最初に口を開いた。


「あの紙、どうしますか」


ユイは懐から紙を取り出し、テーブルに置いた。


折りたたまれた白紙。広げても、何も書かれていない。


「調べる方法はあるか」


リリアに問う。


「いくつか試せますわ。魔力反応は確認しましたが、他にも方法があります。特殊なインク、光に反応する文字、条件で浮かび上がる術式」


「時間は」


「数日いただければ」


「頼む」


リリアが紙を受け取った。


アイリスがスープを啜りながら言う。


「でも、本当に何も書いてないかもしれないよね」


「その可能性もありますわ」


「だとしたら、何のために置いたんだろ」


「メッセージだ」


ユイが答えた。


「何も書かないことが、メッセージになる」


「どういう意味ですか」


カイルが聞く。


「分からない。だが、意図的に置かれていた。見つけてほしかったんだ」


沈黙が落ちる。


ハンスが低く言った。


「……管理していた者がいた。俺たちが来る前に消えた」


「シャドウ・ヴェールですか」


カイルの問いに、ユイは頷いた。


「可能性が高い。だが、確証はない」


エルザが短く言った。


「……今は、情報が足りない」


「そうだ。焦っても仕方ない。分かることから調べていく」


カイルがユイを見た。


「ユイさん」


「何だ」


「あの柱、15本ありましたよね。で、幻モンスターも15体。カオスナイトの名前が読めた」


「ああ」


「他の柱も、いつか読めるようになるんですかね。戦ったら、読めるようになるのかなって」


ユイは一瞬、言葉を止めた。


11本目の柱。あの名前を、自分だけが読めた。仲間には言っていない。


「……かもしれない」


短く答えた。


セイラが、ユイを見ていた。


スープの椀を持ったまま、動きが止まっている。何も言わない。ただ、静かに見ている。


その視線に気づいたが、ユイは目を逸らさなかった。


セイラは何かを感じている。ユイが全てを話していないことに。


7本目のカオスナイトは全員が読めた。戦ったことがあるから。


だが、他の柱を見ている時、ユイの足が一度だけ止まった場所があった。11本目の前で。


セイラはそれを見ていた。


だが、追及はしない。


セイラが視線を外し、スープを飲んだ。


「……謎を知ることは、力を得ることだ」


低い声。独り言のようだった。


「何を知るべきかが分かれば、何を探すべきかも分かる」


リリアが頷いた。


「そうですわね。今回の遠征で、問いが明確になりました」


「問い」


「15本の柱は何か。シャドウ・ヴェールは何をしているのか。消えた冒険者たちはどこへ行ったのか。白紙の紙は何を意味するのか」


「答えは」


「まだありません。でも、問いがあれば探せますわ」


カイルが拳を握った。


「俺、守ります」


唐突な言葉に、全員の視線が向く。


「答えを探す間、俺が守ります。ユイさんも、みんなも」


「カイル」


「俺は前衛です。考えるのは得意じゃない。でも、守ることはできます」


真っ直ぐな目。


ユイは小さく笑った。


「頼りにしてる」


カイルの顔が少し赤くなった。


リリアが穏やかに言う。


「私はユイの判断に従いますわ。今までもそうでしたし、これからも」


「リリア」


「信じていますから」


その言葉が、ユイの胸に刺さった。


信じている。全てを話していないのに。11本目の柱のことを隠しているのに。


セイラが立ち上がった。


「……先に休む」


それだけ言って、食堂を出ていく。


扉が閉まる直前、セイラが一度だけ振り返った。


ユイと目が合う。


一瞬だけ。


セイラの目は、何も責めていなかった。ただ、待っている。ユイが話す時まで。


扉が閉まった。


ユイはその背中を見送った。


セイラは気づいている。ユイが何かを隠していることに。だが、追及しなかった。


その信頼が、重かった。


「俺たちも休むか」


ハンスが立ち上がる。


「ああ。明日から、調査を始める」


全員が席を立ち、それぞれの部屋へ向かう。


ユイは最後に残った。


窓から月明かりが差し込んでいた。


11本目の柱。あの名前。


前世で戦う前に、時を遡った。あの存在との戦いの最中に、38歳のユイはいた。決着はついていない。


いつか、仲間に話す日が来るのか。


それとも、話さないまま、その時を迎えるのか。


分からない。


だが、今は8人でいる。


カイルは守ると言った。リリアは信じていると言った。セイラは、待っていると言わなかったが、待っている。


それだけで、前に進める。


月が窓を照らしていた。その光の中で、ユイは何かを決めたように見えた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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