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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第20章 最下位の名前

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第162話 表の忠誠

上司の部屋。


薄暗い空間に、魔法の明かりがひとつだけ灯っている。深いフードに顔を隠した上司が、椅子に座っていた。


ザインは扉の前で立ち止まり、一礼した。


「報告があります」


「入れ」


ザインは部屋に入り、扉を閉めた。手元の報告書を開く。自分で作成し直したものだ。空白の地点への到達は、記載していない。


「クロウフォールの動向について。王都周辺での活動を継続中。装備の強化を行い、遠征の準備を進めている様子です」


淡々と読み上げる。嘘ではない。ただ、最も重要な情報を削除しただけだ。


「以上です」


沈黙が落ちる。


「引き続き監視を続けろ」


「了解しました」


ザインは一礼し、部屋を出た。


廊下を歩く。角を曲がり、人気のない通路へ入る。奥の小部屋に、二つの影が待っていた。


ミラとドレイク。裏切り派の仲間だ。


ミラが小さく笑う。


「上手くいったようね」


「ああ。疑われていない」


ザインは扉を閉めた。


ドレイクが低く問う。


「……クロウフォールの件、本当に隠すのか」


「隠す」


ザインは断言した。


「空白の地点に到達し、全員が生還した。他の冒険者は確保されたのに、あの8人だけが戻ってきた」


ミラが腕を組む。


「誰かが見逃したのかしら。それとも、手を出せなかったのか」


「どちらにしても、異常だ」


ザインは壁に寄りかかった。


「あの場所は組織が管理している。定期的に観察者を送り、到達した者は確保する。それが手順だ」


「なのに、クロウフォールは無傷で帰った」


ミラの目が細まる。


「興味深いわね」


ザインは頷いた。


ユイ・セイラス。18歳。だが、動きが違う。判断が速い。まるで何十年も戦場を歩いてきた者のようだ。


カオスナイト戦で、ザインは上司派の精鋭10人を殺した。連携を崩し、孤立させ、カオスナイトに殺させた。組織の主力を削るために。


だが、ユイたちは逃げ切った。8人全員が、無事に撤退した。


「あの女には、何かがある」


ザインが低く言う。


「それを、上に報告する気はない」


ドレイクが眉を上げた。


「……独占するつもりか」


「そうだ」


ザインは壁から離れた。


「封印の解除を急ぐ。北の森の封印は緩んでいる。赤目の魔物が出始めた。あれは序章に過ぎない」


ミラが頷く。


「古代種が目覚めれば、世界は混乱する。その混乱に乗じて、組織を掌握する。計画通りね」


「だが、上司はまだ健在だ」


ドレイクが低く言う。


ザインは冷たく笑った。


「ガルスを失い、精鋭10人を失った。上司派の戦力は半減した。だが、まだ足りない」


「次の一手は」


「封印を、さらに緩める」


ザインは懐から小さな水晶を取り出した。


「東の山脈の封印。あそこにも、同じ紋章がある。次はあそこを狙う」


ミラが目を輝かせる。


「複数の封印を同時に緩めれば、幻モンスターの活性化が加速するわね」


「そうだ。世界が混乱すれば、組織は対応に追われる。その隙に、上司を排除する」


ドレイクが静かに頷いた。


「……仲間は増やせるか」


「増やす」


ザインは断言した。


「中立派の中にも、上司のやり方に不満を持つ者がいる。レイナやユーリは使えないが、他にもいる」


ミラが笑う。


「あの老いぼれ、いつまでも権力にしがみついているものね」


「だからこそ、引きずり下ろす」


ザインの目が鋭く光る。


「組織を、俺の手に収める。封印を解き、世界を混乱させ、新しい秩序を作る」


沈黙が落ちる。


やがて、ミラが口を開いた。


「ユイ・セイラスは、どうするの」


「観察を続ける」


ザインは水晶を懐にしまった。


「あの女には、何かがある。組織には報告しない。俺が、独自に追う」


「個人的な興味?」


「本能だ」


ザインは扉に向かった。


「理由は後から見つければいい。今は、動くことが先だ」


ミラとドレイクが立ち上がる。


「次の指示は」


「東の山脈の調査。封印の状態を確認しろ。俺は、別の件を進める」


「了解」


ミラが頷き、ドレイクも無言で従う。


三人は小部屋を出て、それぞれの方向へ散っていった。


廊下で一人になったザイン。


目は決意に満ちている。


組織への忠誠は、もはや意味を持たない。上司も、組織も、すべては踏み台に過ぎない。


世界を混乱させ、その頂点に立つ。


それが、ザインの野望だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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