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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第20章 最下位の名前

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第160話 丘から見ていた者

帰路は長かった。


王都ティリアスへ向かう道を、8人が無言で歩いている。来た時と同じ踏み跡。同じ草原。だが、空気は違っていた。


誰も口を開かない。


カイルは時折後方を振り返り、エルザは最後尾で気配を探っている。


ユイは列の中央を歩いた。


懐に白紙の紙がある。15本の柱。読めなかった文字。答えは何一つ出ていない。


だが、最も重いのは別のことだ。


11本目の柱。


あの名前を、自分だけが読めた。仲間は誰も気づいていない。


言えなかった。


言わなかったのではない。言えなかった。あの名前を口にすれば、何かが動き出す。そんな予感があった。根拠はない。ただの直感だ。


だが、前世の記憶がその直感を裏付けている。


あの存在との戦いの最中に、自分は20年前へ戻った。決着はついていない。何度倒しても再生する相手だった。今世で、いつか再びあの名と向き合う日が来るのか。


それは分からない。分からないまま、歩く。


「……ユイ」


セイラの声だった。


隣に並ぶ。白い息が口元から漏れる。氷の気配が、常よりわずかに濃い。


「何だ」


「見られている」


短く、低く。


ユイは足を止めなかった。


「ああ。広場を出てからずっとだな」


「感知には引っかからない。だが、確かにいる。草原の向こうか、丘の上か。どこかから」


「姿は」


「見えない。でも、目がある。ずっと、こちらを見ている」


セイラの感覚は鋭い。本能的に危険を察知する力がある。その彼女が「見られている」と言うなら、確実に誰かがいる。


だが、仕掛けてこない。ただ、見ている。


それが逆に不気味だった。


「追うか」


「無意味ですわ」


リリアが後ろから言った。


「相手は私たちの動きを知っている。追えば逃げる」


全員が分かっている。見られている。だが、手出しはできない。


「広場のこと、拠点に戻ったら話し合いますか」


「ああ。後でだ」


短く答える。カイルは頷いた。「後で」という言葉に、疑問は挟まなかった。


全員がそうだ。ユイが何かを抱えている。それは分かっている。だが、追及しない。今は歩く。王都に戻り、拠点で落ち着いてから話す。それだけで十分だった。


信頼。その一言が、8人の沈黙を支えている。


ユイは前を向いた。仲間の背中が見える。降下するカラス。統一防具に刻まれた紋章が、夕陽に照らされて光る。


丘を越える。遠くに王都の城壁がかすかに見えた。あと1日で戻れる。


だが、視線は消えない。ずっと背中に感じている。


ユイは振り返らなかった。振り返っても、姿は見えない。


誰かが、自分たちを見ている。それが誰で、何を目的としているのか。今は分からない。


だが、いずれ分かる時が来る。


丘の上に、一つの影があった。


木立に身を潜め、8人の姿を見下ろしている。黒いローブ。深いフード。手には小さな手帳が握られている。


観察者は、迷いのない動きで書き込みを続けた。


クロウフォール。空白の地点に到達。8人全員が生還。滞在時間、約2時間。何かを持ち帰った形跡あり。


ペンが止まる。


あの少女。ユイ・セイラス。


記録によれば18歳。だが、歩き方が違う。警戒の仕方が違う。仲間への指示の出し方が違う。


まるで、何十年も戦場を歩いてきた者のようだ。


年齢と動きが、一致しない。


観察者は手帳を閉じ、丘を下りる。


この情報は、上へ届けられる。そして、誰かがこの記録を読み、何かを判断する。


丘の上で、観察者の目が光った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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