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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第19章 空白の先で、何かが待っていた

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第159話 紙には何も書かれていなかった

全員が広場を出る準備を始めた。


来た道を戻る。木立の境目を越え、踏み跡を辿る。先頭はアイリス、最後尾はエルザ。ユイは中央を歩いた。


広場を出る瞬間、ユイは一度だけ振り返る。


15本の柱。灰色の石が等間隔に並び、影を落としている。そのうちの1本に、視線が止まった。


11本目。


あの柱に刻まれた名前を、自分だけが読めた。


仲間は誰も読めなかった。読めたのは7本目のカオスナイトだけだ。あれは全員で戦った相手だったから、全員が読めた。


だが、11本目は違う。


ユイは表情を変えなかった。何も言わない。ただ、ほんのわずかに長く、その柱を見つめた。

「ユイ」


エルザの声で我に返る。


「……行くぞ」


短く答え、前を向いた。


木立の中を進む。来た時と同じ踏み跡。木の間から差し込む光が足元を照らす。誰も口を開かない。


白紙の紙。読めない文字。管理の痕跡。消えた冒険者たち。


答えは何も出ていない。分かったのは、この場所が重要だということだけだ。誰かが守っているのか、利用しているのか、それすら分からない。


「ユイさん」


リリアが横に並ぶ。


「あの紙、何か仕掛けがあると思いますか」


「分からない。魔力反応はなかった」


「ええ。私も確認しましたわ。何も感じませんでした」


「だが、意図的に置かれていた」


「そうですわね。折りたたんで、挟んで、私たちが見つけるように」


リリアは少し考え、続ける。


「書かないことが意味を持つ、と先ほど申しましたが」


「ああ」


「もう1つ可能性がありますわ」


「何だ」


「私たちには読めないだけ、という可能性ですわ」


ユイは歩みを止めない。


「柱の文字と同じか」


「はい。柱の文字は読めませんでした。でも、カオスナイトの名前だけは全員が読めた。戦ったことがあるから」


「つまり、あの白紙も」


「条件を満たせば読めるのかもしれません。今の私たちには、その条件が分からないだけで」


白紙に見えているだけで、実際には何かが書かれている。


読むための条件がある。


柱と同じ仕組みなら、何かを知る者にだけ読める。


だが、何を知ればいい。


「考えても仕方ないですわね。今は情報が足りません。王都に戻ってから調べましょう」


「ああ」


木立を抜ける。視界が開け、草地が広がった。遠くに丘の稜線。空は薄曇りだ。


「村まで戻るか」


アイリスが振り返る。


「いや。直接王都へ向かう」


「了解」


方向を変え、歩き出す。


村を経由する必要はない。得られる情報は得た。これ以上ここにいても、新しいことは分からない。


帰路は静かだった。


重苦しい沈黙ではない。それぞれが考えている。見たものを整理している。


カイルが時折、後方を振り返る。


「どうした」


「いえ……なんとなく、見られている気がして」


「気配はあるか」


「分かりません。ただの気のせいかもしれません」


 セイラが低く言う。


「……私も感じている」


「何か」


「分からない。感知に引っかからない。だが、空気が違う」


エルザも周囲を見回す。


「姿は見えない」


「追ってきているのか」


「分からない。ただ、広場を出てからずっと、何かがある」


全員が足を止めた。


草原が広がる。丘の向こうに空。動くものはない。


だが、確かに何かがいるような感覚。


視線。


観察。


見られている。


ユイの胸の奥で、静かに警戒が強まる。


「……行くぞ」


立ち止まっても状況は変わらない。


「王都まで戻る」


全員が頷き、再び歩き出す。


夕暮れが近づいていた。空が茜色に染まり、8人の影が長く伸びる。


ユイは仲間の背中を見渡した。


8人。カイル、リリア、アイリス、エルザ、セイラ、セリス、ハンス。そして自分。


全員がいる。


誰も欠けていない。


それだけで、今は十分だ。


前を向く。


懐に、白紙の紙がある。


何が書かれているのか分からない。あるいは、本当に何も書かれていないのかもしれない。


だが、誰かが置いた。


クロウフォールが来ることを知り、見つかるように。


メッセージ。


何のメッセージかは分からない。


分からないまま、持ち帰る。


胸の内に、白紙の意味が重く残る。


11本目の柱。


あの名前の先に、何があるのか。


まだ分からない。


だが、歩き続ける。


8人で。


第19章 完

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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