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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第19章 空白の先で、何かが待っていた

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第157話 ユイが、立つ

カイルの発見が、全員の認識を変えた。


7本目の柱。そこに刻まれた名前。カオスナイト。戦ったことのある相手の名前だけが読める。他の14本は読めない。だが、名前を知れば読めるようになる可能性がある。


「全部確認しよう」


ユイが言った。


「一本ずつ、全員で見る。読める文字があるかもしれない」


全員が頷いた。


1本目から順に回る。リリアが文字の形を記録し、アイリスが配置を確認する。エルザが周囲を警戒し、ハンスが柱の状態を調べる。カイルとセリスが文字を読もうと試みる。セイラは少し離れた場所から全体を見ている。


1本目。誰も読めない。


2本目。誰も読めない。


3本目。4本目。5本目。6本目。


どれも同じだ。文字の形は見える。溝の深さも均一だ。だが、意味が取れない。音が当たらない。言葉として結びつかない。


7本目。


カオスナイト。


全員が読める。戦った相手だからだ。音を知っている。形を知っている。だから読める。


8本目へ進む。


読めない。


9本目。読めない。


10本目。読めない。


そして、11本目の前で、ユイの足が止まった。


文字の形が、7本目と似ている。


配列が同じだ。短い。装飾が少ない。称号ではない。説明でもない。


名前だ。


視線が文字をなぞる。


頭の奥で、音が響いた。


読めている。


この名を、ユイは知っている。


前世で何度も呼んだ。何度も追った。東の山脈地帯。巨大な翼を持つ獣。黒い鱗。深紅の瞳。炎と破壊を纏う幻。


何度も戦った。


何度も追い詰めた。


だが、討ち果たしていない。


決着の瞬間に至る前に、戦いの最中で、ユイは20年前へ戻った。


あの存在との戦いは、終わっていない。


柱に刻まれたその名は、静かにそこにある。


足が動かない。


「ユイさん?」


カイルが声をかけた。


「何か、読めますか?」


ユイは柱を見つめたまま、数秒黙っていた。


読めている。


だが、それを口に出せない。


この名前を知っているのは、前世の自分だけだ。今の仲間たちは、この名を知らない。自分だけが読める理由を、説明できない。


「……いや」


首を横に振る。


「読めない」


嘘だった。


カイルはそれ以上追及しなかった。


「そうですか」


ユイは次の柱へ移る。


12本目。読めない。


13本目。読めない。


14本目。読めない。


15本目。読めない。


全ての柱を確認し終えた。


「結果を整理しよう」


リリアが全員を見回す。


「読めたのは7本目だけ。カオスナイトの柱のみですわ」


「やっぱり、戦ったことのある名前だけが読める仕組みなんだね」


アイリスが腕を組む。


「他の14体の名前を知れば、全部読めるようになるかもしれない」


「文献を調べる価値がありますわね」


リリアが頷く。


カイルが柱を見回す。


「でも、これでほぼ確定ですよね。15本の柱、15体の幻モンスター。この場所は、幻モンスターと関係がある」


「……記録か、封印か」


セイラが呟く。


「どちらにせよ、重要な場所だ」


ハンスが低く言う。


「……守られている理由がある。管理されている理由がある」


全員が黙った。


ユイは、11本目の柱を見ていた。


あの名の先に、何があるのか。


前世では到達できなかった。倒す前に、時を遡った。38歳の自分は、あの存在との戦いの最中にいた。決着はついていない。


今世ではどうなるのか。


いつか、この柱の前に立つ日が来るのか。仲間たちと共に、あの名前を読む日が来るのか。


分からない。


だが、来るとしたら、その時は——


「広場をもう少し調べる」


ユイは視線を外し、言った。


「管理の痕跡があった。誰かがここを使っている。その証拠を探す」


全員が頷き、散っていく。


ユイは最後に、もう一度だけ11本目の柱を見た。


ほんのわずかに、長く。


仲間には読めない名前。


自分だけが読めた名前。


その事実を、誰にも言わなかった。

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