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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第19章 空白の先で、何かが待っていた

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第154話 地図の端へ

村を出て半日が経った。


道は次第に細くなり、やがて完全に消えた。最後に確認できた踏み跡を辿っていたが、それも草に埋もれ始めている。


代わりに木々が増えた。最初は疎らだった木立が、今は両側から迫っている。頭上の空が狭い。光は届いているが、直射ではない。木漏れ日が地面にまだらを作る。


「植生が変わってきたね」


先頭を進むアイリスが言う。


「さっきまでは低い草だけだった。今は背の高い木が増えてる。下草も湿ってる」


「雨が多いのか」


エルザが短く問う。


「違う。地面から水気が上がってる感じ。川か湿地が近いかも」


ユイは地図を確認する。


だが、この先は空白だ。地形の記録はない。何があるかは、歩いて確かめるしかない。


「これ、踏み跡ですよね」


カイルの声で全員が足を止めた。


地面に踏み固められた跡。1人や2人ではない。複数の足が、何度も踏んでいる。


エルザが膝をつき、土を指で押さえる。


「……3組以上。時期が違う」


「分かるのか」


「最初は古い。草が被ってる。次は少し新しい。3番目はまだ草が起き上がっていない。1週間以内だ」


「消えた冒険者たちの跡か」


ユイが言う。


「可能性は高い。方向は同じ。全員、この先へ向かってる」


リリアが杖を握り直す。


「合流した形跡もありますわ。ここで道が1つになっています」


踏み跡はこの先で1本に絞られている。別々の時期に来た者たちが、同じ地点を目指した。そして戻っていない。


「行くぞ」


ユイが先に立つ。


木立の密度がさらに増す。枝が絡み合い、空がほとんど見えない。それでも光はある。木の間を縫うように差し込む光が、足元を照らす。


「……空気が変わった」


セイラが小さく言う。


「重い、か」


「重い。でも、それだけじゃない。固定されてる」


「固定」


リリアが杖を軽く振る。


「魔力の流れが通常と異なりますわ。淀んでいるというより、形を保っている。ここでは同じ状態を維持しようとしている」


セリスが水晶杖を胸に引き寄せる。


「水の気配が……ないわけじゃない。でも動いてない。普通は少しでも揺れるのに」


ハンスの視線が木々の幹に止まる。


「……古い」


「何が」


「木だ。この太さと高さ。100年以上は経っている。だが苔が少ない。風化も弱い」


アイリスが枝を1本折り、断面を見る。


「乾いてない。生きてる。でも、普通の生き方じゃない」


エルザが前を見据える。


「……エリアそのものが古い。だが、古びていない」


全員が黙る。


この場所は守られているのか。閉じ込められているのか。


判断はつかない。ただ、普通の森ではない。


ユイは前世の記憶を探る。


この感覚。この空気。この植生。


ない。


38歳まで生きた前世の自分は、この場所を知らない。

来なかったのか。来られなかったのか。


理由は分からない。


前世の記憶が役に立たない。


「進む」


短く告げる。


踏み跡は1本。迷いようがない。前へ続いている。


やがて光の質が変わる。


木々の間から差し込む光が強くなる。視界の先が明るい。


アイリスが足を止めた。


「……樹木の先、開けてる」


全員が前を見る。


木立が終わる境界。その向こうに光が満ちている。空が見える。


何かがある。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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