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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第18章 受け取ること、使うこと

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第150話 明日、行く

夜明け前、8人でゴードンの工房へ向かった。


出発当日の朝だ。空はまだ暗く、王都の石畳は夜の冷気を残している。歩くたびに、8人分の足音が乾いた反響を返した。鍛冶地区の通りは静まり返り、人影はない。だが工房の前に立つと、中から規則正しい炉の音が聞こえた。火はすでに入っている。ゴードンは起きていた。


扉を開けると、作業台に灯りが落ちている。


「来たか」


低い声が、いつも通りに響く。


「換装を頼む。今日出発する」


ゴードンは頷き、素材を受け取った。元素核、魔獣皮、雷結晶2個、氷精核。5点を作業台に並べる。1つずつ手に取り、表面の欠け、魔力の流れ、純度を確かめる。それからユイたちを順に見た。


「誰に何を入れる」


「私の鎧に元素核。リリアのローブに魔獣皮。カイルの鎧に雷結晶を1個。セリスのローブに雷結晶を1個。ハンスの装甲に氷精核」


「エルザとセイラは」


「空のままにする」


ゴードンがわずかに間を置いた。何か言うかと思ったが、何も言わない。ただ頷き、作業台へ向かった。


工具を手に取る。


最初はユイの鎧。嵌め座の縁に工具を当て、元素核を押し込む。抵抗があり、わずかに力を加える。小さな固定音が鳴った。ゴードンが縁を指でなぞり、ずれがないか確認する。


「入った」


短い言葉。


次にリリア。魔獣皮がローブの嵌め座へ沈み込む。布地の質感が微妙に変わる。


カイルの鎧へ雷結晶。金属の内側を光が走る。セリスのローブにも同様に固定される。セリスが息を整え、目を閉じる。


最後にハンス。氷精核が重装甲に収まる。装甲表面に一瞬だけ白い霧が走り、すぐに消えた。


工具が置かれる。


「5点、終わった。換装が必要になったらまた来い。次からはお前たちでもできるようになれ」


「ありがとう」


ユイの声は、静かだった。


ゴードンが全員を見渡す。普段は余計なことは言わない男だ。


「行ってこい」


それだけだった。


炉の奥へ戻っていく背中を、8人が見送る。


拠点に戻り、荷を背負い、門へ向かう。


朝の光が王都の石畳に差し始めている。通りにはまだ人が少ない。8人が並んで歩く。全員の防具に、降下するカラスの紋章が刻まれている。嵌め座に素材が入った者は5人。空のまま出る者が2人。それぞれの判断だ。


城門を抜ける。


空気が変わる。


王都の外の冷たい風が頬を打つ。


歩きながら、ユイは昨夜のことを思い返す。


全員が早めに休んだ後、1人で食堂に残り、地図を広げていた。5点の方向線。その先の空白。そこへ向かった者がいる。自分たちが最初ではない。


それが何を意味するのか、答えは出ない。


足音が近づく。


カイルだった。眠れなかったらしい。水を取りに来たと言う。


「……ユイさん、また地図ですか」


「ああ」


「何か変わりましたか」


「変わっていない。ただ、先に動いている者がいる」


カイルは少し黙る。


「それって……怖いですね」


ユイは顔を上げた。


怖い、と言う。


その率直さが、わずかに胸に触れる。


「……そうだな」


正直に答えた。


カイルが小さく笑う。肩の力が抜けた笑い方だ。


「でも、クロウフォールは8人ですから」


そう言って、水を持って戻っていく。足音が廊下の奥へ遠ざかる。


ユイは地図を折りたたむ。


「ありがとう」と呟いたが、届いたかどうかは分からない。それでいい。


空は完全に明るくなりつつある。


地図の空白の先で、何かが待っている。味方か、敵か、それともまったく別のものか。


分からない。


だが、止まらない。


ユイは前を見る。


明日ではない。


今日、行く。


第18章 完

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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