第149話 出発の前日に、届いた情報
第149話 出発の前日に、届いた情報
出発前日の午後、食堂に7人が集まっていた。
議題は嵌め座への初回換装。完成した防具はすでに馴染んでいるが、嵌め座は全員空のままだ。素材を入れて初めて属性耐性が機能する。明朝、出発前にゴードンの工房へ持ち込む。そのために今日中に決めなければならない。
アイリスだけがいない。午後は街へ情報収集に出ている。
ユイは地図を広げた。空白の先。岩場、深森、山岳、湿原、氷洞。これまで踏破した地形の延長線上にあるはずだが、確証はない。
「相手の属性は不明だ。汎用性を優先する。意見を出せ」
最初に口を開いたのはリリアだった。
「私は毒・腐敗耐性を優先しますわ。回復役が倒れると全体に響きます。魔獣皮を1枚、嵌めておきたいです」
カイルが続く。
「鎧に雷結晶を入れます。金属鎧は雷を呼ぶ。最前線で受けるのは私です。今回は資産を考えて1箇所だけにします」
ハンスが低く言った。
「……氷精核を入れる。凍結による亀裂を先に消す」
「氷洞の延長線上の可能性がある。妥当だ」
ユイは頷いた。
セリスが静かに手を挙げる。
「私も雷結晶をお願いしたいです。水は雷に弱い。優先度は高いと思います」
「正しい判断ですわ」とリリア。
エルザは短く言った。
「……空のままにする」
視線が向く。
「未知の相手に素材の気配を乗せると、影潜みに影響が出る可能性がある。今は何も入れない。相手を見てから決める」
ユイは数秒考えた。
「分かった。換装は後回しだ」
セイラも続く。
「……空のまま。今の状態で火精核は使わない。干渉が出る」
「了解だ」
資産を確認する。元素核1、魔獣皮1、雷結晶2、氷精核1。全員分を埋めるには足りない。優先順位を絞るしかない。
「明朝、出発前にゴードンへ持ち込む。初回はあちらが嵌める」
全員が頷いた。
地図を折りたたもうとしたとき、食堂の扉が開く。
アイリスが戻ってきた。予定より少し早い。顔色がいつもと違う。
「……1つだけ、気になる話がある」
空気が変わる。
「空白の先、その方向に小さな集落がある。ここ2ヶ月、そこへ向かった冒険者が複数いる。でも、誰も戻っていない」
カイルが眉を寄せる。
「失踪の5点とは別か」
「別。あれは遠征帰りの話。今回は、目的を持って向かった人たちの話」
食堂に沈黙が落ちる。
「痕跡は」
「戦闘の跡はないらしい。荷物だけが残っていたって」
「荷物だけ……」
セリスが小さく繰り返す。
意図的に持ち去られたのか、自ら消えたのか。材料が足りない。
ユイは地図を見つめる。前世の記憶を探るが、この時期、この方向に関する明確な記録はない。未知だ。
「予定は変えない。明日出発する」
カイルが静かに答える。
「分かりました」
アイリスは椅子を引き、腰を下ろした。
やがて夕食の準備が始まる。セリスが厨房に立ち、鍋の音が響く。いつもの匂い、いつもの手順。
だが空気は違う。
嵌め座に入れる素材は決まったりだ。
出発は、明日だ。
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