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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第18章 受け取ること、使うこと

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第145話 強化か修理か、紋章を決める

拠点の食堂に全員が集まったのは夕方だった。


食事の時間ではない。テーブルに皿はない。ゴードンから提示された方針を全員で確認するための時間だ。工房からの帰り道、誰かが「拠点で話しましょうか」と言ったわけでもなく、気づけばそうなっていた。


カイルが最初に口を開いた。


「強化でお願いしたいです。折れる前に対処できて、よかったです」


「振り出しが遅くなる。今日からトレーニング用の大剣で慣らしを始めろ」


「はい。本剣が戻ってくるまでに、溜めを使う動きを体に入れておきます」


クロウフォールには、各自の武器の下位互換にあたるトレーニング用の装備が組織の資産として揃えてある。実戦には使えないが、感覚を維持するには十分だ。今は全員の武器と防具をゴードンに預けているため、その期間中はそれで動くことになっていた。


リリアが続けた。


「消費量の増加は計算し直せば問題ありませんわ。長期戦の後半を中心に、回復薬の使用タイミングを見直します」


「計算の結果は全員に共有してほしい。動き方に関わる」


「承知しましたわ」


セリスが言った。


「強化したら具体的にどう変わるんですか」


リリアが水晶の性質と魔力伝導の関係を順に説明する。セリスはうなずきながら聞き、途中で小さく言った。


「杖が語りかけてくる感じって、本当にあることなんですか」


自分に問いかけるような声だった。


「素材との親和性が高まると、そういう感覚が出ることはありますわ」


ユイがテーブル全体に向かって言う。


「どう思う。各自、気になることがあれば出してくれ」


少し間があった。


アイリスが言った。


「感覚が変わるのは正直怖いんだけど、遠くまで届くなら慣れた方がいいよな」


エルザが短く返す。


「感触の変化は慣らしでどうにかなる」


セイラが続けた。


「出力が変わる問題は自分で対処する。今のうちにトレーニング用の杖で制御の幅を広げておく」


ハンスが言う。


「移動が落ちる。立ち位置の計算を組み直す。カイルとの距離も変わる」


「確認させてください」


カイルが頷いた。


ユイは全員の話を聞き終えてから言った。


「防具が完成してから慣らし期間を10日取る。新しい防具を受け取ってすぐに実戦には入らない」


全員が頷いた。


少し間があって、アイリスが言った。


「あと、紋章どうする?」


食堂の空気が少し変わる。


「カラスじゃない? 名前にも落ちるって入ってるし。クロウフォール、落ちるカラスって意味でしょ」


カイルがゆっくり言った。


「落ちるカラスか……渋いですね」


セリスが小声で言う。


「可愛いデザインにしたい」


「却下だ」


エルザが横を向かずに返した。


「まだ言っただけだよ……」


「……カラスでいい」


セイラが言った。


全員が少し驚いたように静かになる。


ユイがテーブルの端に置いてあった紙を引き寄せ、形を描く。翼を広げたままではなく、降下している姿のカラス。落ちているのではなく、狙って降りていく形だ。


「これでどうだ」


全員が覗き込む。


「いいと思います」


カイルが言った。誰も反対しなかった。


翌朝、ユイは1人でゴードンの工房を訪ねた。紙を渡す。ゴードンはそれを受け取り、少しの間だけ見た。何も言わずに工房へ戻っていく。


扉が閉まった。


「10日後に来い」という言葉だけが残った。


待つ時間が始まった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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