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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第18章 受け取ること、使うこと

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第144話 嵌め座と、統一の印

「防具の一部に、素材を後から入れ替えられる座を設けたい」


ユイが言った。


工房が静まり返る。ゴードンは眉一つ動かさず、ユイを見ていた。全員の視線が集まる。


「防具の本体はそのままにして、属性を決める芯素材だけを換装できるようにする。相手の属性が変われば、芯を入れ替えて対応する。私はこれを嵌め座と呼んでいる」


「……聞いたことがない」


ゴードンが腕を組む。値踏みではない。言葉の中身を追っている目だ。


「私だけでなく、全員の防具に設けたい。それぞれの属性と動き方に合わせた構造で、新規に作り直す形になる」


ゴードンが動かなくなった。


作業台の上に並ぶ8人分の装備を見る。次にユイを見る。再び装備を見る。目を閉じ、何かを計算し始めた。炉の低い音だけが工房に響いている。


誰も口を開かない。


アイリスが隣のセリスの袖を引いた。小声だが、静けさの中でははっきりと聞こえる。


「それ、すごくないか」


セリスが小さく頷く。エルザは動かない。カイルは腕を組んだまま前を向いている。リリアは杖を持ち直し、静かに立つ。ハンスは微動だにしない。セイラは作業台の上を見つめていた。


ゴードンが目を開く。


「8人分、全部か」


「ああ。それぞれの装備種別と属性に合わせて設計してほしい。軽装には軽装の構造で、重装には重装の構造で」


「接合の方法は」


「圧着と魔力接合の両方を使う。どちらかが欠けても保持できるようにする。外すときは工具が要るが、入れ替えは慣れれば短時間でできる」


ゴードンは再び黙った。今度は長い。


炉が低く鳴る。奥で金属が冷える音がした。ゴードンは作業台の端に置かれた紙を手に取り、8人の顔を順に見る。それぞれの体格、装備の種別、動き方を思い出すような視線だった。


「……やってみる」


空気がわずかに動く。


「ただし時間がかかる。8人分を一から設計して作る。武器への応用はまだしない。防具だけだ。失敗すれば最初からやり直す。それでいいか」


「構わない。頼む」


ユイが頷く。ゴードンも短く頷き返した。


「既存の装備の強化と修理は並行して進める。ただし嵌め座を設けた防具が完成した時点で、今の防具は役目を終える。新しい防具に切り替えることになる」


「全員分の防具が揃う、ということか」


「そういうことだ」


静かな言葉だった。


8人が同じ構造の防具を持つ。初めてのことだ。その意味を、それぞれが少しずつ受け取っていく。


ゴードンが全員を見渡した。


「もう一つ、聞く」


誰も口を開かない。


「統一の印を入れるか。全員の防具に同じ紋章を刻む。希望があれば入れる。なければ入れない」


静寂が落ちる。


カイルが隣のリリアを見る。リリアは前を向いたまま、わずかに目を細めた。アイリスは少し顔を上げる。エルザは動かない。ハンスは正面を向いたままだ。セリスは手を膝の前で重ねる。セイラは装備の並ぶ台を静かに見つめていた。


「入れる」


ユイが答えた。迷いはない。


「デザインは後で持ってこい。決まったらすぐに来い」


「ああ」


「嵌め座の設計と8人分の新規製作が入る。完成まで10日かかる。工期は延ばせない」


「了解した」


ゴードンはユイの防具を手に取り、工房の奥へ向かった。それが今日の終わりの合図だった。全員が頭を下げ、工房を出る。


外の光が目に刺さる。空は晴れていた。鍛冶地区の通りに金属の音が遠く響く。工房の中とは違う空気だ。


8人は並んで歩き出した。


少し進んだところで、アイリスが足を緩める。


「統一の印か……」


小さな声だった。誰に向けたわけでもない。ただ、胸に溜まったものがそのまま言葉になった。


誰も続けない。


それでも、全員の歩幅がほんのわずかに揃っていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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