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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第17章 隠していた荷物を、床に置く

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第140話 みんな、すでに気づいていた

最初に口を開いたのはカイルだった。


「……毎回、何かを見てましたよね。で、ユイさんが少し黙ってた」


責める声ではない。確認だ。遠征のたびに、ユイが何かに気づき、わずかに沈黙する瞬間があった。そのたびに聞こうとして、やめた。今なら繋がる、という声音だった。


「そうだ」


ユイが短く答える。


「岩場から気づいていた。毎回確認して、毎回同じ方向に向いていた。それを話さなかった」


カイルはゆっくり頷く。それ以上追わない。納得の形だ。責めるためではなく、揃えるための確認。


アイリスが口を開いた。


「なんで言わなかったの」


まっすぐな問いだ。遠回しにしない。


「確証がない状態で話して、間違っていたら皆に余計な重さを背負わせると思っていた」


即座に返る。


「それは決めつけだ」


空気が一瞬止まる。


ユイは少し黙った。


「……そうだな」


認める。言い訳は重ねない。


アイリスは腕を組んだまま、静かに息を吐く。怒りではない。言うべきことを言っただけだ。


エルザが視線を上げる。


「方向の先は何だ」


感情はない。ただ必要な情報を求める声。


「まだ分からない。地図に記録がない。古代エルフの地図に標はあるが、名称が消されている。何があるかは、行ってみないと分からない」


エルザは頷く。それで十分だというように。


ハンスが低く言う。


「地図の空白への対処は、装備が完成してからか」


「ああ」


「……わかった」


順番が決まれば動ける。それで足りる。


しばらく誰も口を開かない。


その中で、セリスが小さく息を吸った。


「……怖くなかったんですか、一人で抱えて」


柔らかい問いだった。責めない。ただ知りたいという声。


食堂が静まり返る。


ユイはすぐに答えなかった。


怖くなかったかと問われれば、違う。怖さはあった。方向が揃いすぎていること。偶然ではないという確信。誰にも言わずに確かめ続ける選択。


だが、その怖さを口にすることはできなかった。


地図を見つめたまま、言葉を探す。


出ない。


沈黙が伸びる。


セリスはユイの顔を見つめ、それから視線を落とした。


「……聞いて良かったか分かりません」


小さく言い、膝の上で指を重ねる。後悔ではない。答えがなかったことへの理解だ。


テーブルの向こうで、セイラは無言のまま地図を見ている。5点の印を、ゆっくりと目でなぞる。何も言わない。ただ考えている。


部屋の空気は重くはない。ただ、静かだ。


そして、リリアだけがまだ何も言っていなかった。


テーブルの端に座り、杖を膝に置いたまま動かない。ユイの言葉も、カイルの確認も、アイリスの指摘も、エルザの問いも、ハンスの確認も、セリスの問いも、すべて聞いていた。


その目が、今夜初めてわずかに温度を帯びる。


静かな光が宿る。


まだ何も言わない。


だが、次に口を開くのは自分だと決めた目だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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