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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第17章 隠していた荷物を、床に置く

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第136話 雷が、声より速い

溶岩帯を出て1日、景色が変わった。


山肌の赤みが消え、平原が広がる。草も木もない。ただ地面が黒く焼けている。空気が違う。肌がちりちりする。髪が静電気で浮く感覚がある。


雷原だ。


平原の上空に稲妻の筋が常時走っている。音もなく光り、消え、また光る。止まらない。遠雷ではない。地面のすぐ上を電気の線が這っている。


「カイル、止まれ」


ユイが短く言った。


カイルの銀色の鎧の表面が、微かに光っている。放電している。金属が帯電している。


「……あ、腕がしびれます。少し」


「鎧に電気が来てる。接触するな。距離を保て」


「はい。ただ、動けないわけじゃないです。今のところ」


ハンスの装甲も同様だった。石と金属の継ぎ目から微かな放電が走っている。ハンスは無言で自分の腕を見て、それから前を向いた。


「……問題ない」


「把握した。2人は敵との直接接触を最小限にしろ」


「了解です」


後衛は金属装備が少ない分、帯電の影響は小さい。リリアの杖は木製だ。セリスの水晶杖はわずかに反応しているが、魔法の使用には問題ない。アイリスの軽装は問題なし。エルザの黒装束も反応していない。


「セリス、感知できるか」


セリスが水晶杖を前に向け、少し間を置く。


「……あそこです」


迷いがない。指が一点を示す。平原の中央よりやや右、距離は100メートルほど。


「確かか」


「はい。水じゃないですけど、似た何かが動いてます。前に感じたのと同じ感覚です」


氷洞でアイスエレメンタルを感知した時と同じ感覚だ。エレメンタル系は水感知に引っかかる。


「アイリス」


「同じ方向。1体だけだと思う」


「よし。全員、指示があるまで動くな」


ユイは平原を見渡す。地面は黒く、草もない。隠れる場所も遮蔽物もない。戦い方は単純になる。引きつけて、崩す。


「エルザ、左から回れ。影は使えるか」


エルザが地面を見た。空が開け、影は薄い。だが岩の陰がいくつかある。


「……薄いが、使える」


「接近して毒刃を入れろ。動きを鈍らせるだけでいい」


「わかった」


「リリア、光魔法で亀裂を作れるか」


「溶岩帯より温度差が作りやすいですわ。帯電していますが、光魔法への影響は今のところありません」


「ハンス、亀裂が入ったら重撃を入れろ」


「……ああ」


「カイル、引きつける。ただし触れるな。距離を詰めすぎたら即退け」


「わかりました。任せてください」


全員が動き始める。


カイルが前に出た。平原を走り、エレメンタルの方向へ向かう。50メートルの距離に入ったところで、電撃の放電体が姿を現した。


サンダリオンだ。


球体に近い形で、表面を電気が絶えず走っている。高さは1メートルほど。小さいが密度がある。


カイルの盾に電気が伝わる。


「くっ……」


腕が一瞬しびれる。だが退かない。盾を前に出し、距離を保つ。サンダリオンの注意がカイルへ向いた。


その隙にエルザが左から接近する。地を這うように走り、岩の影に沈む。影潜みで音が消える。死角から毒刃を差し込んだ。


サンダリオンの動きが鈍る。


「リリア」


「今ですわ」


光魔法がサンダリオンの表面に集束する。温度差が走り、表面に亀裂が入る。電気の流れが乱れた。


「ハンス」


ハンスはすでに動いていた。重い足音が平原に響き、ハンマーが振り下ろされる。亀裂の中心に直撃した。


サンダリオンが崩れる。


電気が散って消え、雷結晶が地面に落ちた。青白く光る結晶だ。


「思ったより早かった」


アイリスが言う。


ユイは頷いた。


「これで、揃った」


雷結晶を回収しながら、ユイは頭の中で確認する。魔石、硬鱗、鋭牙、魔核、硬岩、魔獣皮、再生石、氷精核、火精核、雷結晶。10点全部だ。


ただし、誰も気づいていなかった。


丘の向こうで、それを静かに見ている者がいることに。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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