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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第17章 隠していた荷物を、床に置く

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第134話 炎は、同じ場所では倒せない

フレイムエレメンタルが前進してきた。


速くはない。ゆっくりと、だが止まらない。近づくだけで熱波が先に来る。5メートルの距離で、もう顔が焼けるような圧がある。


「カイル、受けられるか」


「やります!」


カイルが盾を前に出し、エレメンタルとの距離を詰めた。爆炎が散弾状に広がる。盾の表面で弾いたが、熱量が鎧全体へ伝わる。


「熱が鎧ごと来る……っ」


歯を食いしばりながら押し返そうとするが、足元が滑る。溶岩の上だ。踏ん張る地面がない。


「ハンス、支えろ」


無言で横に入る。2人で圧力を分散させる。


前進は止まった。だが押し込めない。


「セイラ、撃て」


セイラが杖を構える。氷槍を形成し、エレメンタルの中心部へ放つ。白い光の線が空中を走り、直撃した。


音がした。鈍い、吸い込まれるような音だ。


氷槍は砕けなかった。体表に触れた瞬間、形を失い、そのまま消える。エレメンタルが一瞬だけ揺れ、すぐに元の形へ戻る。


「……効かない。地熱が邪魔してる」


セイラの声は低い。


氷槍は作れる。だがここでは、発射した直後から威力が落ちる。地面から上がる熱が、魔法の冷却を相殺している。


「リリア」


「試します」


リリアが光魔法をエレメンタルの表面に当てる。光の刃が体表に触れ、一定の損傷を与えた。だが持続しない。熱量に押され、光の密度がすぐに落ちる。


「……効果はあります。ただし、この環境では維持できませんわ」


「わかった」


2体目が横から回り込んでくる。


「もう1体来た、右から」


アイリスが声を上げる。


エルザが音もなく右側へ滑り、影の中に沈む。2体に挟まれる前に位置を取り直す。


「退がれ。場所を変える」


ユイが判断した。


「カイル、下がれるか」


「いけます!」


「ハンス、盾維持」


「了解」


後退の合図が出る。2人は防御を保ったまま下がる。エレメンタルは追ってくるが速くない。距離は維持できる。


「撤退中に攻撃を受けるな。距離だけ保て」


「了解です!」


後退しながら、ユイは頭の中で整理する。


炎属性は無効。氷は地熱に殺される。光は効くが持続しない。


この場所では戦術が成立しない。


場所を変えなければ勝ち筋がない。


「エルザ」


名を呼ぶと、即座に返る。


「さっき通り過ぎた、溶岩の筋が途切れた場所がある。地熱が低かった。そこなら氷が生きる」


短い。だが必要な情報は全部入っている。


「場所はわかるか」


「……ああ」


「距離は」


「200メートルほど後方」


ユイは即断する。


「そこへ誘導する。全員、後退しながらエレメンタルを引きつけろ。エルザ、先行して場所を確保しろ」


「わかった」


エルザが歩き始める。


「アイリス、引きつけながら距離を保て」


「わかった。任せて」


アイリスが投擲を1つ放つ。エレメンタルの注意がそちらへ向く。その隙に全員が距離を広げる。


熱波が背中に当たる。


「カイル、無理するな」


「まだいけます!」


「セイラ、温存」


「了解」


「リリア、次は合図で」


「承知しましたわ」


隊列が入れ替わる。


エルザが先頭。ユイが最後尾でエレメンタルとの距離を管理する。


いつもと違う順番だった。


2体のフレイムエレメンタルが後を追う。ゆっくりと、だが確実に。


炎は、同じ場所では倒せない。


ならば、倒せる場所へ連れていく。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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