表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第17章 隠していた荷物を、床に置く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
133/152

第133話 熱が、足元から来る

王都を出て2日目の朝、溶岩帯の入口に立った。


最初に感じたのは匂いだった。硫黄と焦げた石の匂いが、風より先に来る。次に足の裏から熱が這い上がってくる。靴底を通して骨まで届く、重い熱だ。岩盤は赤みを帯び、ところどころ薄く光っている。光っている箇所は踏めない。踏んだ瞬間、橙色の液体が滲み出す。


「水魔法が……使いにくい。全部蒸発する」


セリスが前を見たまま言った。迷いはない。湿原でも氷洞でも、毎回自分の限界を試してきた。その積み重ねが、今の一言を先に口にさせている。


「わかった。後衛は距離を保て」


ユイは短く答え、隊列を確認する。カイルとハンスが前。エルザが右側に開き、アイリスが先行索敵。後衛3人の間隔も問題ない。


エルザが止まっていた。


溶岩流の筋を目で追い、岩盤の継ぎ目を確かめ、もう一度溶岩に視線を戻す。同じ動作を何度も繰り返す。観察し、計算している。


「……こっちだ」


短く言い、右端を先頭で歩き始めた。自分から先に動いた。それがいつもと違う。山岳でも氷洞でも、エルザは指示を待つことが多かった。今回は、自分で選んだ。


全員が続く。


エルザが選んだ端は溶岩の筋から距離がある。岩盤の色が周囲より暗く、光っていない。地熱が低い場所だ。直感ではなく、見て判断している。


溶岩帯の中へ入ると、空気の圧が変わった。前から熱が押してくる。壁のような熱だ。


「熱が……鎧に来てます。中まで」


カイルが歯を食いしばりながら言う。銀色の鎧が地面からの熱を吸い、金属全体へと伝わっていく。


「動きは落とすな」


「はい。ただ、長引くと腕に来ます」


「把握した」


ハンスが無言で周囲を見渡す。石の装甲は熱の伝わりが遅いが、継ぎ目から熱気が入り込んでいるのが見える。


「セイラ、今の状態で撃てるか」


セイラは少し間を置いた。


「……難しい。地熱が冷却を落とす。当たっても威力が半分以下になる」


「わかった。今は待機」


「リリア、光魔法はどうだ」


リリアが杖を握り直しながら答える。


「温度差を使う魔法ですので、この熱では差が作りにくいですわ。ただ、完全に使えないわけではありません。状況次第では」


「状況が変わったら言え」


「はい」


「アイリス、どうだ」


「火が固まって動いてる。2体以上。あと50メートルくらい」


アイリスが声を落とす。索敵の感覚がはっきりと反応している。視線の先、岩の陰に揺れるものがある。炎の陽炎とは違う揺れ方だ。意思を持って動いている。


「距離を保ったまま確認する。全員、動くな」


ユイは止まれの手を上げた。


全員が静止する。足元の熱だけがじわじわと這い上がってくる。


岩陰からゆっくりと姿を現したのは、高さ2メートルを超える炎の体躯だった。輪郭は絶えず揺らいでいるが、そこに確かにある。腕があり、脚がある。炎が生き物の形をしている。フレイムエレメンタルだ。


「2体確認」


アイリスが短く告げる。


もう1体が岩の反対側から姿を現す。同じ大きさ、同じ揺らぎ。2体が並び、こちらを向いた。


ゆっくりと。急いでいない。最初から気づいていたかのように。


「全員、構え。ただし撃つな」


ユイが低く言った。今はまだ、距離がある。


熱が、足元から確実に上がってくる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、

ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、とても励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ