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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第16章 錆びた道化と師匠の嘘

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第131話 なぜ信じてくれないんですか

帰路の2日目だった。


山道を下り、街道に近づくにつれて空気が柔らかくなる。足元の霜が減り、草が戻ってくる。ラスティとは氷洞の前で別れた。ゼックが「またどこかで」と手を振り、ノアが無言で踵を返した。ナオミだけが最後に振り返り、リリアを一度見てから歩き去った。


リリアはその背中を見ていたが、何も言わなかった。


クロウフォールの8人が街道を歩く。会話は少ない。アイリスが索敵を続け、エルザが後方を確認する。カイルが昨日のゼックとの会話を反芻するように少し笑っている。ハンスが無言で歩く。セリスとセイラが並んでいる。


リリアがユイの隣に並んだのは、昼を少し過ぎた頃だった。


最初は黙って歩いた。


歩幅を合わせて、前を向いたまま。2人の間に会話がない時間が続いた。他のメンバーが自然に少し前へ進み、2人だけになる形になった。


「ユイさん、聞いてもいいですか」


「何だ」


「野営の夜、師匠と長く話していましたね」


「ああ」


「何を話したんですか」


「情報の共有だ」


リリアが止まった。


ユイも止まった。他のメンバーの足音が少し遠くなる。


「師匠が私に教えなかった情報を、ユイさんには話した。そういうことですか」


「互いに知っていたことを確認した。それだけだ」


「ユイさんは前から、師匠の調査を知っていたんですよね」


「ああ」


リリアが少し間を置いた。


「……最初に師匠を紹介した時から、ですか」


ユイが答えない。


その沈黙が答えだった。


リリアの声が少し揺れた。丁寧語は崩れない。だが抑えているものが、端の方から滲み始めている。


「私は最初からいました。クロウフォールの最初のメンバーです。ユイさんを信じて、ここまで来ました」


「……」


「失踪情報が積み重なっているのも、方向が揃っているのも、うすうす感じていました。でも聞いても答えてもらえなかった。師匠のことも、昨日初めて知りました」


声が細くなる。目が少し赤い。


「なぜそこまで信じてくれないんですか。私たちは、仲間ですよ」


ユイが答えない。


「仲間なら、危険なことでも伝えてください。不安にさせてもいいんです」


リリアの声がさらに小さくなる。


「一人で抱えていたら、あなたが壊れます」


それでもユイは答えない。


リリアが一歩前に出た。ユイと向き合う形になる。


「なぜ」


声が震える。目から涙が一筋落ちた。リリア自身が驚いたように目を見開く。


「なぜ言ってくれなかったんですか」


声が少し大きくなる。叫んではいない。ただ、今まで抑えてきたものが少しだけ溢れた。それだけだ。


ユイが静かに言った。


「謝るな」


リリアが口を押さえる。涙がまた落ちる。


「お前は正しい」


リリアが目を伏せた。唇が少し震えている。涙を拭かない。拭く動作が今はできない、という様子だった。


ユイが続けた。


「装備が揃ったら、全部話す。全員に。約束する」


リリアが涙を拭かないまま頷いた。


前を向いて、歩き始めた。


ユイも同じ方向を向いて歩き出す。


前方でアイリスが一瞬だけ振り返った。2人の様子を見て、何も言わずに前を向いた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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