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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第16章 錆びた道化と師匠の嘘

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第130話 線の先に、地図にない場所がある

焚き火の端は静かだった。


他の全員は少し離れている。ゼックとカイルがまだ話し込んでいる。ハンスが薪を足している。セリスとアイリスが毛布を広げている。エルザとセイラはそれぞれ黙って座っている。リリアは少し離れた岩に背をつけ、目を閉じていた。


ナオミが先に口を開いた。


「ラスティの情報網で、失踪の報告を集めていた。岩場、深森、山岳、湿原。今日、ここで5点目が揃った」


ユイが頷く。


「同じ方向に向いている」


ナオミが驚く顔をしない。


「知っていたのね」


「岩場から気づいていた。でも、まだ仲間には話していない。確証がなかった」


「確証が出た」


ナオミが懐から折り畳まれた紙を取り出した。広げると、手書きの地図だった。ラスティが独自に記録してきたものだろう。王都のギルドが持つ地図より細かい場所もあれば、空白になっている箇所もある。


「5点の方向線を延ばした先に、地図に記録されていない地域がある」


ナオミが指で線を引く。岩場から始まり、深森、山岳、湿原、氷洞。5点を結んだ線の先に、地図の記載が途切れている場所があった。


「古代エルフの地図には、そこに何かの標が入っているけれど、名称が消されている」


ユイが地図を見ながら言った。


「意図的に」


「意図的に」


ナオミが繰り返した。


2人の間に少し間が落ちた。焚き火が低く燃えている。夜の山の冷気が足元から這い上がってくる。


「何かが集まっている」


「そう思っている。ただ、何が集まっているのかは、まだ分からない」


ユイは地図の空白を見つめた。前世の記憶の中にも、この場所はない。行ったことがないのか、それとも行けなかったのか。前世では辿り着く前に別の事態が起きた可能性がある。だが確かめる方法がない。


「失踪した冒険者は」


「戻っていない。全員が」


ユイは地図から目を離さない。


ナオミが続けた。


「ラスティの中でも、この件を知っているのはゼックとノアだけ。他のメンバーには話していない。動ける人間だけに絞っている」


「ノアが私を見ていた理由はそれか」


「あの子は慎重な人間よ。新しい要素が加わった時、必ず自分で確かめようとする」


遠くでノアが地図を広げているのが見えた。焚き火の光の届かない場所で、一人で何かを確認している。こちらの会話の方向は向いていない。だが、視線がたまにこちらへ流れてくる。


「クロウフォールの子たちに、話す気はある?」


ナオミが静かに聞いた。


ユイが少し間を置いた。


地図の空白を見る。5点の方向線を頭の中で引く。リリアの「わかりましたわ」の温度を思い出す。アイリスの「ユイは責任感が強すぎる」という声を思い出す。


「……まだ決めていない」


「なぜ」


「装備が完成していない。不完全な状態で動かせない」


「情報を共有することと、動かすことは別の話よ」


ユイが答えない。


ナオミが続けなかった。押しつけない。それもナオミという人物の流儀だとユイは知っている。


焚き火の向こうで、リリアが目を開けた。岩に背をつけたまま、天を見上げている。何を考えているかは分からない。


ナオミがそちらを見てから、静かに言った。


「リリアはあなたを信じたいと思っている。それは本当のことよ」


ユイは何も言わなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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