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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第16章 錆びた道化と師匠の嘘

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第129話 師匠、なぜ教えてくれなかったんですか

「今日まで知らなかった」というユイの言葉が、リリアの中でしばらく残った。


嘘ではないと思った。ユイが嘘をつく時の間とは違う。ナオミがラスティにいることは、ユイも今日初めて知った。それは本当だろう。


だが、それだけではないという感覚もあった。


ナオミとユイの視線が交わった一瞬。ナオミが首を振った意味。2人の間に何かがある。初対面の者同士の目ではない。それが今日始まったものではないという確信が、じわりと広がっていく。


リリアはナオミに向き直った。


「師匠。私に言えないことがあったということですか」


「あったわ。ごめんなさい」


ナオミの声は変わらない。謝罪に言い訳を重ねない。それがナオミという人物の誠実さだとリリアは知っている。知っているからこそ、余計に重かった。


「弟子より、ラスティの方が信頼できたということですか」


「そういうことじゃない」


「では、なぜ」


ナオミが少し間を置いた。


「幻モンスターの活性化は、公的な機関では調べられない。ギルドも王都の組織も、情報を持っていても動けない理由がある。ラスティは20年以上、表と裏を問わず動いてきた。私が必要としていた情報網は、ここにしかなかった」


「それは理由です。なぜ私に言わなかったかの答えではありません」


リリアの声が揺れている。丁寧語は崩れない。だが普段の静けさとは違う質の揺れ方だ。


「あなたを危険に近づけたくなかった」


「師匠」


「幻モンスターの調査は、関わった人間を変える。知ってしまったら引き返せない。あなたにはまだその段階ではないと思っていた」


「私はもうクロウフォールの一員です。幻モンスター討伐を目的とするパーティに所属しています。引き返せない場所にすでにいます」


ナオミが目を細めた。


「……そうね」


「分かっていたはずです。私がここにいることを」


「知っていたわ」


リリアが少し息を止めた。


知っていた。クロウウォールに所属して、遠征を重ねて、失踪情報の痕跡に触れながら戻ってきていた。その間ずっと、ナオミは知っていた。


「……それでも、言わなかったんですか」


「ええ」


リリアが少し間を置いた。それから、静かに続けた。


「師匠はユイさんと、幻モンスターについて話していましたか」


「……ええ」


「どのくらい前から」


ナオミが答えない。


その沈黙が答えだった。


リリアはユイを見た。


「ユイさんは知っていましたか。師匠が調査をしていることを」


ユイが少し間を置いた。


「知っていた」


リリアの目が、かすかに揺れた。


自分がユイに「何か気になることがあるのですか」と聞いた夜のことを思い出した。確認してから話す、とユイは言った。素材を揃えてから、とも言った。その間ずっと、ユイはナオミの調査を知っていた。自分だけが知らなかった。


「……いつから、ですか」


「最初に会った時から、ナオミが調査をしている人物だということは分かっていた。ラスティにいることは、今日初めて知った」


丁寧な答えだった。嘘はないと思う。だが、丁寧に答えるほど、自分だけが外にいたという事実が輪郭を持ってくる。


ナオミがリリアの横に並んだ。


「リリア。今夜は休みなさい。話せることは、明日話す」


「……はい」


リリアが短く答えた。力が抜けた声だ。


その夜、焚き火が落ち着いてきた頃、ナオミがユイの横に来て静かに座った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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