表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第16章 錆びた道化と師匠の嘘

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
128/136

第128話 焚き火の向こうに、知っている顔がいた

リリアが動けなくなった。


茶碗を持ったまま、立っている。焚き火の向こうに座る人物から目が離せない。白銀のローブ。長い金髪。碧眼の穏やかな瞳。見間違いではない。10年以上共に過ごした顔だ。


なぜここに。なぜラスティに。なぜ今まで一度も言わなかった。


問いが3つ同時に来て、どれも声にならない。


ナオミがリリアに気づいた。


一瞬だけ、表情が揺れた。驚き、それから何か別のもの。後悔に近い何かが過ぎって、すぐにいつもの穏やかな顔に戻った。


「リリア。来ていたのね」


声は変わらない。落ち着いた、温かい声だ。


リリアの手から茶碗が傾く。中身がこぼれる直前で止まった。こぼれなかった。それだけが、今のリリアが保っているものだった。


「……師匠。なぜ、ここに」


ゼックが軽く「え、知り合い?」と言った。アイリスがゼックの腕をそっと引き、口を閉じさせた。場の空気が変わったことを、その場の全員が感じ取った。


カイルが姿勢を正す。ハンスが動きを止める。セリスが視線を下げる。エルザが短剣から手を離す。


ナオミが立ち上がり、リリアの前まで歩いてきた。


「話しましょう。落ち着いてから」


「今、話してください」


リリアの声が揺れていた。丁寧語は崩れていない。だが、力が入っている。いつもの静かさとは違う。


ナオミが少し考えてから口を開いた。


「ラスティの情報網を借りていたの。幻モンスターの活性化を調べるために」


「なぜ私に言わなかったんですか」


「あなたを巻き込みたくなかった。危険なことだから」


「私はもうクロウフォールに所属しています。すでに巻き込まれています」


リリアの声がわずかに強くなった。抑えているが、抑えきれていない部分が出てきている。


ナオミがリリアを見た。それから、焚き火の向こうのユイを見た。


視線が1秒だけ止まった。


ユイは焚き火の向こうから、ナオミの目を受け止めた。


知っている目だ。前世で何度も見た目だ。ユイが2度目を生きていることを、最初から察知していた人物の目だ。この世界でユイの本質に最も近いところにいる、唯一の人物。


それを、リリアは知らない。


ナオミの視線がユイからリリアへ戻った。


リリアがユイを見た。


「ユイさん……知っていましたか」


静かな問いだった。責める声ではない。ただ、確認しなければならない、という声だ。


ユイは答えた。


「今日まで知らなかった」


それは本当だ。ナオミがラスティにいることは知らなかった。ただ——前世で出会ったナオミが、幻モンスターを調べ続けていた人物だったことは知っていた。今世でも同じことをしていると、どこかで思っていた。それを言えない。


リリアがナオミに向き直った。


「師匠。私に言えないことがあったということですか」


「あったわ。ごめんなさい」


「弟子より、ラスティの方が信頼できたということですか」


「そういうことじゃない」


「では、なぜ」


ゼックが遠くで小さく「なんか空気重くなってきた。俺、あっちで筋肉の話してます」とカイルを連れて立ち上がった。ノアだけが動かない。焚き火の端に座ったまま、この場を見ている。


ナオミとリリアが向き合った。


師弟の間に積み上がってきた時間と、その中に埋まっていた隙間。リリアは丁寧語のまま、声が揺れていく。


「師匠が何かを隠しているとは、思っていませんでした。でも……」


「今は、そう感じているの?」


リリアが答えない。


その沈黙が答えだった。


ナオミがユイを一瞥した。小さく首を振る。今じゃない、という意味だとユイには分かった。


リリアはその視線の交わりを見た。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、

ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、とても励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ