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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第16章 錆びた道化と師匠の嘘

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第126話 錆びた連中が、笑いながら来た

足音は複数だった。


洞窟の奥から松明の光が近づいてくる。ユイは足音の数と間隔を数える。8人前後。歩き方に緊張がない。警戒している人間の動きではない。


「誰だ」


エルザが短く言い、手が短剣にかかった。アイリスが天井の突起へ戻り、高い位置から入口を見る。カイルが盾を前に出す。


「おー、こわいこわい。俺たちですよ、俺たち」


松明を持った人物が霧の中から現れた。


ぼさぼさの茶髪に無精髭。くたびれた革鎧は継ぎ接ぎだらけで、腰の剣の鞘には傷が多い。口端が自然に上がっている。全身から力が抜けていて、戦意というものが一切感じられない。


「ラスティです。知ってます? 錆びてるけど現役のやつら。あ、今ちょうど同じ洞窟にいましたね。偶然ですねー」


後ろから7人が続いて現れた。全員、装備はまちまちだが動き慣れた体をしている。


クロウウォール全員が武器を下げた。殺気がない。ただの冒険者だ。


「ゼック・アッシュさん、ですね」


リリアが静かに言い、男が少し目を丸くした。


「知ってんですか、俺のこと。いや嬉しいですね。有名になったもんだ」


ゼックと名乗った男が全員を見渡す。視線がカイルで止まった。目が輝く。


「おお。すごい大胸筋。俺、筋肉好きなんすよ。一緒に語りませんか」


カイルが少し戸惑いながらも素直に答えた。


「あ、はい……ぜひ」


ゼックがセイラに向き直る。


「あなたは氷魔法使いですよね。さっきのすごかった。斜面跳ね返しとか、普通やらないですよ。センスありますねー」


セイラがゼックを見た。0.5秒。それから完全に視線を外した。返事はない。


ゼックが一人で続ける。


「……あれ。無視されましたかね。俺、何かしましたかね」


アイリスが笑った。天井の突起から降りながら、声を立てて笑っている。


「気にしないで。そういう子なんだよ」


「そう言ってくれるの、あなただけです」


ゼックが今度はユイを見た。


笑顔のままだが、視線だけが変わった。品定めではない。ただ、正確に見ている。ユイの立ち位置、足の向き、周囲への目配りの方向。一瞬でそれをやってから、また笑顔に戻った。


「あなたがリーダーですね。なんか、見てる方向が全部違う。うわ一番怖い」


「ゼック・アッシュ。ラスティの古参。元Aランク」


ユイが平静に言うと、ゼックの笑みが少しだけ固まった。


「……よく知ってますね」


「冒険者なら知っている」


「そうですかね。俺、最近は全然目立ってないんですけど」


ゼックが頭を掻きながら後ろを振り返る。


「ノア、出てきていいよ」


後ろから人影が前へ出た。


黒い短髪。灰色の瞳。細身で音がない。背中に長弓、腰に短剣。動くたびに空気が変わらない、そういう歩き方をする女性だった。


ノア・クレインと名乗る前に、ユイはもう目が合っていた。


ノアの視線が0.5秒、ユイの上で止まる。それだけだ。挨拶もない。品定めでもない。ただ、確認した、という目だった。


前世でこの顔に会ったことがあるか。記憶を探る。出てこない。だがこの視線には覚えがある気がした。何かを知っている人間の目だ。


「他にもいますよ」


ゼックが洞窟の暗がりの方を向いた。


「最後のひとり、そろそろ出てきてください」


暗がりが動いた。


白銀のローブが松明の光を受けて輝く。長い金髪。碧眼。穏やかな顔立ち。その人物がゆっくりと歩み出てきた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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