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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第16章 錆びた道化と師匠の嘘

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第125話 水が光になる瞬間

1体目は、そう時間もかからなかった。


カイルとハンスが亀裂の入った箇所へ同時に踏み込む。カイルが盾の縁を亀裂の中心に当て、全体重を前へ傾けた。ハンスがハンマーの側面で反対から押さえる。2人の力がエレメンタルの内部に集中した瞬間、亀裂が広がり、轟音とともに崩れた。


砕けた氷の破片が四方に散る。中心部から冷気が噴き出し、全員の吐息が同時に白くなった。


氷精核がいくつかの破片ごと地面に転がった。半透明の青白い光を持つ、拳ほどの塊だ。


「確保」


ユイが短く言い、エルザが素早く拾い上げて布に包む。


全員が少し動きを緩めた。アイリスが天井の突起から降り、セリスが肩から力を抜く。カイルが「やりましたね」と言い、ハンスが小さく頷いた。


だが全員が休んだのは10秒も経たないうちだった。


洞窟の奥から、音がした。


氷が割れる音ではない。何かが動く、引きずるような音だ。松明の光の届かない奥に、青白い光がまた灯る。


今度は大きい。


エレメンタルの体積が1体目の1.5倍はある。半透明の巨体が霧の中からゆっくりと進み出てくる。


「セリス、残魔力はどのくらいだ」


「半分、切っています」


「リリアは」


「まだ動けます。ただし長時間は難しいですわ」


ユイはエレメンタルを見ながら考える。前と同じ手順は使えない。セリスの水薄膜はコストが高い。長く張り続ければ、このまま枯渇する。


「セリス、固定は最小限でいい。動きを止める一瞬だけ確保しろ」


「分かりました」


「リリア、光の集束点を今度は中心に変えろ。表面温度の差より、内部に直接亀裂を入れることを優先する」


「……ですわね」


リリアが頷きかけ、続きを引き取った。


「打点に当てる、ですわね」


ユイは一瞬、リリアを見た。


「ああ。それでいい」


「セイラ」とユイが続ける。「今回は壁を使え。直撃はもう通らない。跳ね返った氷槍を——」


「核部分に当てる」


セイラが短く言い、杖の先を壁の方向に向けて角度を測り始めた。洞窟の内壁は氷の結晶で覆われている。反射の角度は読める。


エレメンタルが近づいてくる。冷気が前へ押し出され、足元に霜が走った。


「行くぞ」


セリスが水の薄膜を展開する。最小限の面積、最小限の時間。エレメンタルの動きが鈍った。その一瞬を使ってリリアが光を束ねる。


今度は表面ではなく、内部の中心に向けて集束させる。光が氷の体を通り抜けるように差し込み、内側で屈折する。


セイラが氷槍を放った。


真正面ではなく、左側の壁へ向けて撃つ。壁面で反射した氷槍が角度を変え、エレメンタルの中心部に当たる。通常では届かない軌道だった。


核の部分に亀裂が走る。


「カイル」


「行きます!」


カイルが踏み込んだ。亀裂の中心に盾の縁を当て、全体重を前に乗せる。ハンスが左からハンマーを亀裂に叩き込んだ。内側から壊れるような音がして、2体目のエレメンタルが崩れ落ちた。


氷精核が転がり出る。今度は少し大きい。


セリスがその場に座り込んだ。膝をついて、杖を支えにする。


「……疲れました」


息が少し荒い。顔色は悪くない。魔力が底をついたわけではないが、集中を使い切った顔だ。


「よくやった」


ユイが短く言った。


カイルがセリスの横にしゃがみ込む。「大丈夫ですか」と問うと、セリスが「大丈夫です、ちょっと座りたかっただけです」と答えた。


ハンスが氷精核を布で包む。アイリスが周囲の索敵に戻る。エルザが確保した素材を荷に入れる。


全員が作業に戻る静けさの中、ユイは洞窟の奥を見ていた。


霧は薄くなっている。2体を倒した後、冷気が少し弱まった気がした。


それでも。


洞窟の奥から、別の音がした。


足音だ。


だが氷の上を踏む音ではない。革か、布か。人間の足音だ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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