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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第15章 泥の底に、何かが沈んでいる

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第120話 4点目の意味

帰路は街道沿いを歩いた。


湿原を抜けると足場が戻り、全員の歩幅が自然と広くなる。泥の重さから解放された分、体が軽く感じる。陽が傾き始め、草地が黄みがかった光に染まっていた。


しばらく歩いたところで、アイリスがユイの隣に並んだ。


前を向いたまま、歩くペースを合わせる。


「岩場。深森。山岳。湿原」


静かに言った。雑談ではない。確認だ。


「全部で誰かがいなくなってる」


ユイは前を向いたまま歩く。


「ユイはもう気づいてるでしょ」


「気づいてる」


「いつから」


「岩場から」


アイリスが少し黙った。後ろの会話が聞こえないよう、2人の間隔が自然と広がっていた。他のメンバーは少し後ろを歩いている。カイルとセリスが何か話している声が遠く聞こえる。


「……それで黙ってたの」


責める口調ではなかった。ただ、重さがある。


「根拠がなかった。今も完全な根拠はない。だが4箇所目で、方向が揃っている」


「方向?」


「3点を結ぶ線。4点目もその延長にある。どこかへ向かっている」


アイリスは少し考えた。草地を踏む足音が続く。


「……それ、みんなに話した方がいいんじゃないかな」


「次の素材を揃えてから話す。今は動けない」


「なんで」


「装備が半分しかない。不完全な状態で動いたら、仲間を危険にさらす」


アイリスが前を向いたまま、少し間を置いた。


「その線の先に何があるの」


「分からない」


短く答えた。それ以上は言わない。地図上の空白。3点から延ばした線の先。そこに何があるのか、ユイ自身も言葉にできない。


アイリスが「ふうん」と言った。


軽い音だったが、考えている顔だ。


「……ユイは責任感が強すぎる」


「そうかもしれない」


「否定しないんだ」


「否定できない」


アイリスが少し笑った。声には出さなかったが、横目で見えた。


「みんなに話すのは、装備が揃ってからなんだね」


「ああ」


「それまでは私も黙ってる、ってこと?」


「頼む」


少し間があった。


「……分かった。でも」


アイリスが前を向いて歩き始めた。


「急ぎすぎるなよ。一人で全部抱えると、判断が歪む」


ユイは何も答えなかった。


否定はしなかった。


アイリスは前を向いて歩き続ける。ユイも同じ方向を向いて歩く。2人の間に、少し新しい種類の沈黙があった。


後ろから、カイルの声が聞こえた。


「ユイさん、今夜の夕食はセリスさんが何か作るらしいですよ」


「……そうか」


「楽しみですね!」


「ああ」


平和な声だった。


ユイはその声を聞きながら、頭の中で地図を描く。


4点。揃っている。方向が揃っている。


次は氷洞か、溶岩帯か、雷原か。


装備を完成させることが先だ。


それだけを、繰り返した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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