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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第15章 泥の底に、何かが沈んでいる

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第118話 霧の中の会話

野営の場所は、湿地から少し離れた草地だった。


水面から距離を取り、地面の固い場所を選ぶ。焚き火を起こすと、湿気を含んだ空気の中で炎が小さく揺れた。霧が深く、光が数メートル先で止まる。その先は白い壁だ。全員の顔が、オレンジ色の輪の中に浮かんでいる。


夕食が終わり、会話が途切れていた。


「……最近、毎回こういう感じのものを見つけますね」


カイルが言った。焚き火を見ながら、独り言のような口調だった。


「岩場でも、深森でも、山岳でも」


アイリスが続ける。いつもの軽口ではなく、確認するように言葉を並べた。


「で、今日も」


誰かが呟く。セリスだったかもしれない。


静寂が落ちた。


炎が揺れる音だけが残る。ハンスは動かない。エルザは焚き火を見ていない。視線が霧の方向を向いている。セイラは膝の上に杖を置いたまま、目を閉じている。


リリアがユイを見た。


「ユイさん、何か気づいていることがあるんじゃないですの」


ユイは少し間を置いた。


「……今は、根拠のない話はしたくない」


「根拠がなくても、仲間として共有する価値があるんじゃないかと思うんですけれど」


リリアの声は穏やかだった。ただ、いつもより少しだけ芯がある。丁寧語の中に、はっきりとした意思が混じっていた。


ユイは焚き火を見たまま答える。


「素材を揃えてから話す」


「……揃えてから、というのはいつのことですの」


「装備が完成してから」


短い沈黙があった。


「わかりましたわ」


リリアが言った。


前を向く。焚き火の方に視線を戻す。


アイリスがユイを横目で見た。何か言いかけた。口が少し開く。やめた。視線を焚き火に戻し、膝を抱えて座り直す。


しばらく誰も話さなかった。


「明日の素材確保、何体くらい倒せそうですか」


カイルが言い、場が少しだけ動いた。


「状態次第だが、2体は確保できる」


ユイが返す。


「了解です」


カイルが頷く。


その会話が終わると、また静かになった。


セリスが水筒を取り出して一口飲んだ。エルザは相変わらず霧の方向を見ている。ハンスが薪を一本、炎の中に追加した。火の粉が散り、すぐに消えた。


ユイは焚き火の向こうのリリアを、一度だけ見た。


銀髪が炎に照らされて揺れている。緑の瞳は焚き火を向いていた。こちらを見ていない。


それでいい、とユイは思う。今は話せない。話す状態ではない。根拠なく不安を広げることは避けたかった。装備が完成してから、全部をまとめて話す。それが正しい順序だ。


正しい順序のはずだった。


アイリスがユイを横目で見て、何かを言いかけて、やめた。

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