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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第15章 泥の底に、何かが沈んでいる

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第115話 水を使う戦術

霧の薄い場所に、全員が輪になって座った。


葦の茂みが風よけになり、湿気はあるが霧は薄い。全員の呼吸が落ち着いていく。泥汚れは乾き始め、カイルの銀のプレートアーマーが茶色く変色していた。


「意見を出せ。何でもいい」


ユイが短く言う。


少し間があった。


「私から、いいですか」


セリスが言った。


全員が視線を向ける。作戦会議でセリスが最初に口を開くのは珍しい。本人もそれを分かっているのか、少し背筋を伸ばしてから続けた。


「水魔法で泥を引き剥がせば、内部の核が露出するんじゃないですか。さっきは周囲の水ごと動かそうとして失敗しましたけど、ゴーレムの表面だけに流れを集中させたら、別の結果になるかもしれません」


リリアが少し考えてから頷く。


「理論的には筋が通りますわ。泥の凝固を解いて、核を丸裸にする。その状態で氷を内部から当てれば、割れる可能性がありますわ」


「……核の位置が見えないと難しい」


エルザが短く言う。現実的な指摘だった。泥の表面から核がどこにあるか判断できない。当てずっぽうで水流をかけても、核が露出するとは限らない。


沈黙が落ちる。


「……私、分かるかもしれません」


セリスが言った。


今度は全員がわずかに固まる。


「水の流れを感じ取れます。さっきゴーレムの周りを動いていたとき、水が避けている場所がありました。密度の高い塊があると、水は自然にそこを回り込む。核は、水が避けている場所にあるはずです」


誰も即座には答えない。


セリスは普段、自分の感覚をこういう形で主張しない。いつも後方で補助と回復に徹していた。だからこそ、その発言の重さが場に残った。


リリアが最初に口を開く。


「それは有効な情報ですわ。アクアニア種の感覚察知は水流の変化を読むと教本にもありますわ。理論と一致します」


「……使える」


エルザが短く言う。


カイルが尋ねる。


「つまりどういうことですか」


「セリスが核の位置を特定する。そこに向けて水流を集中させ、泥を引き剥がす。露出した核をセイラが割る」


ユイが整理する。


「ハンスは崩れたゴーレムを仕上げる役だ。カイルは前に出て動きを止める囮になれるか」


「任せてください!」


「アイリスとエルザは側面から牽制。セリスが動きやすい位置を確保しろ。リリアはセリスの補助と全体の回復を両立させる」


全員の役割が明確になった。


ユイはセリスを見る。


「できるか」


セリスは少し間を置いた。その間に、ほんのわずかな迷いが見える。この感覚が実戦で通じるかどうか、本人にも確証がないのだ。


だが、頷いた。


「やってみます」


「やってみようじゃない。やる」


「……やります」


今度は迷いがなかった。


ユイは立ち上がる。


「行くぞ。今度は最初からセリスを動かす。全員、セリスの指示を優先して動け」


カイルが「了解です!」と言い、立ち上がる。ハンスが無言で巨体を起こす。エルザが黒装束の泥を手で払い、短剣の握りを確かめる。セイラが氷の杖を持ち直し、吐息が白く揺れる。リリアが長杖を構えながらセリスの隣に並ぶ。


霧の方向へ、全員が向き直る。


ゴーレムはまだそこにいる。水面の揺れが遠くに見えた。


セリスが先頭を歩いた。


いつもと逆だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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