表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第14章 山と、消えた痕跡

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
114/120

第114話 マッドゴーレム、初遭遇

水面の揺れが、止まらない。


波紋が同心円を描き、葦の根元まで広がっていく。風はない。水草も揺れていない。揺れているのは、何かが底から押し上げているような、内側からの動きだった。


「全員、止まれ」


声を落として告げる。全員が即座に足を止めた。


霧の向こう、水面の中心が盛り上がる。


泥が、持ち上がった。


最初は小さく見えた。だが立ち上がるにつれて、その輪郭が大きくなっていく。高さが2メートルを超え、さらに膨れ、3メートルに達する。泥と腐草が固まった巨体。表面から水が滴り落ち、重い音を立てて地面に落ちる。


目も口もない。だが、こちらを向いているという圧だけがある。


マッドゴーレム。


「カイル、前へ」


「任せてください!」


カイルが盾を構えて前に出る。


ゴーレムが一歩踏み出した。


着地の衝撃で泥が飛び散る。半径2メートルに泥の塊が降り注ぎ、足元がさらに悪化する。ユイの左腕に塊が当たり、黒銀鎧に泥が張りついた。


速い。


ストーンゴーレムより、確実に速い。動きが不規則だ。右に寄ったかと思うと、次の瞬間には左から迫る。重心の読み方がまったく違う。


ゴーレムの腕が振り下ろされる。


カイルが盾で受けた。


衝撃はあった。だが想定と違う。ゴーレムの体が一部崩れて広がり、衝撃が分散する。盾が泥を弾くのではなく、泥の中に沈み込む形になった。


「効かない!」


「退がれ、受け方が違う」


カイルが素早く下がる。


「物理で固める前に、水分を抜くか固めるかだ。泥の特性が岩と違う」


ユイは判断を口にしながら周囲を見る。足元が悪い。立ち位置を選びながら動くだけで消耗する。


「セリス、リリア、水を操れるか」


「やってみます!」


セリスが水晶の杖を構える。リリアも長杖を向ける。2人が水流を起こそうとするが、泥の密度が高く、水と土が分離しない。表面の水だけが動き、ゴーレム本体に届かない。


「密度が高すぎます……水が引けません」


「分かった。セイラ」


「……やる」


セイラが前に出て、氷の杖を持ち上げる。


白い霧が先端に集まり、次の瞬間、ゴーレムの表面に氷が走った。泥が一瞬で凍りつき、動きが止まる。


「今だ、全員で打撃を集中させろ」


全員が一斉に動く。カイルが盾の縁で側面を叩き、ハンスのハンマーが正面から当たる。ユイが柄頭で関節らしき部位を打つ。


重い音が響く。


だが崩れない。


凍結が、溶ける。


10秒も保たない。泥が水分を持っているため、氷が解けるのが早い。再び動き出したゴーレムが腕を薙ぎ払う。アイリスが間一髪で飛び退き、エルザが影に溶けるように後退する。


「凍結から打撃を繰り返す」


ユイが判断する。それしかない。


2回目の凍結。


3回目。


セイラの形成が遅くなる。魔力の消耗が明らかだ。リリアが回復魔法を向けるが、根本的な解決にはならない。全員の消耗が積み上がっていく。


泥は、こちらの足も奪う。


「撤退する」


短く告げる。


「ここで無理に押すより、戦術を変える。一度距離を取る」


カイルが口を開きかけ、閉じる。ゴーレムを見て、頷いた。


全員が後退する。


ゴーレムは追ってこない。水辺の範囲から出ると、動きを止めた。縄張りを持つ個体だ。


霧の薄い場所まで下がり、全員が足を止める。


ユイは息を整えながら考える。


前世でどう倒したか。記憶の中の湿原戦は、今日のこれと形が違う。


「作戦を立て直す。話せる状態か」


全員が頷く。誰も怪我はない。ただ消耗と、泥の重さだけが残っていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、

ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、とても励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ