表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第14章 山と、消えた痕跡

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
112/120

第112話 帰還と、ユイの地図

夜明けとともに起きた。


山の朝は早い。空が白む前から岩肌が輪郭を取り戻し、足元が見えるようになる。全員を起こし、残りの素材を確認した。昨日の3体分で魔石6個、硬岩4個。必要数にはまだ足りない。


ユイは一度、全員の状態を見渡した。


昨夜の休息で消耗はある程度戻っている。セリスの術式の揺れも落ち着いていた。セイラの氷槍の形成速度も、朝の冷気の中では安定している。


「もう1体倒せる状態か」


「……問題ない」


エルザが答える。


「やります」


カイルが即座に言う。


ハンスが無言で頷いた。


朝のうちにもう1体のゴーレムを処理した。昨日の3体で積み上げた連携が、そのまま機能する。誘導、氷槍、崩し、風刃斬。流れが一度も噛み合いを外さなかった。


討伐後、追加で魔石2個と硬岩2個を回収する。


合計で魔石8個、硬岩6個。ゴードンから指定された数を上回った。


「終わりだ。下りる」


全員が荷物をまとめる。


下山の道は登りより早い。足場の悪い箇所も、来た時より体が慣れている。アイリスが先行して安全なルートを確認し、エルザが後方の死角をカバーする。同じ動きが自然に出るようになっていた。


山道を抜け、街道に入ると気温が上がる。肩から力が抜ける感覚がある。


「やっぱり平地はいいね」


アイリスが言う。


「……そうだ」


ハンスが短く続ける。


帰路の会話は軽かった。


「次は湿原のマッドゴーレムですね」


カイルが言う。


「足場の問題がありますわ。湿地での戦闘は岩場より変数が多いですわ」


リリアが返す。


「泥って斬撃、効くのかな」


セリスが首を傾げる。


「それはゴードンかギルドで確認ですね」


カイルが笑う。


「あ、そういえば」


アイリスが思い出したように言った。


歩きながら、少し遠くを見る目をしている。雑談に混ぜるような口調だったが、その内容は軽くない。


「山でも失踪した人がいるって話、ギルドで聞いたかも。前に深森でも聞いたし」


少し間を置く。


「岩場、深森、山岳。俺たちが回った場所、3箇所全部で失踪者が出てるんだよね。偶然かな」


誰もすぐには答えなかった。


カイルが「そう言われると……」と呟くが、続きは出ない。リリアは静かに前を向いたままだ。


ユイは先頭を歩きながら、何も言わなかった。


頭の中で地図を広げる。


岩場。深森。山岳。


3点を静かに結ぶ。


前世の記憶の中にはない失踪情報。前世より多いモンスターの密度。深森で聞こえなかった獣の声。山岳で聞こえなかった鳥の声。そして、あの夜に聞いた低い音。


3点を繋ぐ線の先に、地図の空白がある。


偶然ではない。


だが証拠がない。証拠のない話を持ち出しても、今は動けない。根拠なく不安を広げることは避けたかった。


拠点に着いたのは夕方だった。


ゴードンの作業台に魔石と硬岩を並べる。ゴードンが1つずつ手に取り、質を確認する。


「質は悪くない。山岳のゴーレムにしては、よく取れた方だ」


「次は湿原だ」


「マッドゴーレムか。足場に気をつけろ。泥に足を取られると、動きが半分になる」


「わかった」


素材を棚に収めながら、ゴードンが言う。


「体は大丈夫か」


「問題ない」


短く答え、拠点に戻る。


夕食を終え、全員が各自の部屋へ引き上げた。


ユイは一人になってから、机の上に地図を広げた。


岩場に指を置く。深森に指を置く。山岳に指を置く。


3点を、ゆっくりとなぞる。


それぞれの地点に、小さく印をつけた。


インクが紙に滲む。


「あのキャンプ跡の依頼書。北側に——」


声には出さず、頭の中で繰り返す。


3点から延ばした線の先へ視線を向ける。


地図の上の空白。


前世の記憶にも刻まれていない場所。


だが、3本の線はそこへ向かっている。


今は動かない。


素材収集を完遂することが先だ。湿原、そしてその先。装備が整っていない段階で、あの空白地点へ踏み込むことはできない。


ユイは地図を折り畳んだ。


折り目が、3つの印の上を通った。


第14章 完

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、

ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、とても励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ