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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第14章 山と、消えた痕跡

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第109話 岩を倒す方法

翌朝、全員の状態を確認してから動いた。


セリスが各自の消耗を確認し、回復魔法を最低限に抑えながら巡らせた。キャンプを張った場所は岩陰で風が遮られ、思ったより体が休まっていた。ただ、山の夜は冷えた。セイラ以外の全員が、朝の空気に肩を縮めた。


「昨日と同じ個体が戻ってくる可能性はあるか」


カイルがユイに確認する。


「ゴーレムは縄張りを持つ。同じ個体が同じルートを動く。あの傾斜地の手前で待てば、おそらく来る」


「了解です」


全員が昨日確認した傾斜地へ向かった。岩盤が斜めに傾いた地形だ。大型の重量物がその上に乗れば、自重でバランスを崩す。エルザが提案した場所だった。


待つ時間は短かった。


遠くの岩肌が動いた。ゆっくりと、しかし確実に近づいてくる。昨日と同じ個体だ。


「始める」


ユイの声に全員が動いた。


カイルが前に出た。大盾を構え、ゴーレムの正面に立つ。ゴーレムがカイルを認識し、腕を振り上げた。


「来ます!」


カイルは受け止めるのではなく、斜め後ろに体重を移した。押し合いではなく流す。ハンスが横から加勢し、ゴーレムの腕の軌道をわずかに変える。完全に受け止めない。方向だけを変える。


ゴーレムが一歩前に踏み出す。傾斜地の方向へ、少しずつ誘導していく。


「セイラ」


「……わかった」


セイラが氷槍を放つ。ゴーレムの左肘の関節に当たる。昨日と同じ箇所だ。昨日の亀裂が残っていれば、さらに深まるはずだった。


接合部から細かい破片が散る。亀裂が広がっている。


「効いてる」


アイリスが確認する。


カイルとハンスが交互にゴーレムの注意を引きながら、少しずつ位置をずらす。ゴーレムはゆっくりと向きを変え、追いかける。その重い足取りが、傾斜地の端へ近づいていく。


「もう少し右だ」


ユイが指示を出す。


カイルが右側に出て意識を引きつける。ハンスが左から圧力をかける。ゴーレムが右へ向き直した。傾斜の一番急な位置に、ゴーレムの左足が乗った。


「セイラ、もう一発」


「……了解」


2発目の氷槍が左膝の関節に当たる。亀裂が走る音がした。


ゴーレムの左足がわずかに沈む。傾斜地の岩盤が、その重さに負けた。


「押すな、流せ」


カイルとハンスがゴーレムの上体に圧力をかける。押すのではなく、重心が崩れる方向へ、わずかに誘導する。


ゴーレムの巨体が、ゆっくりと傾いた。


踏みとどまろうとして、左膝が折れる。関節の亀裂が限界を超えた。


倒れた。


地響きが足元から伝わってくる。岩盤に巨大な岩塊が叩きつけられた音だった。


「核を出せ!」


リリアが光魔法を発動させる。淡い光がゴーレムの胸部を照らし出す。岩の表面の奥、薄く光る核の位置が浮かび上がった。


アイリスとエルザが左右から動く。転倒したゴーレムの胸部へのルートを作るため、側面の岩を削る。エルザの短剣が外皮の薄い箇所を正確に突き、アイリスの投擲ナイフが亀裂の入った部分を叩く。


通路が開く。


ユイが前に出る。


風刃斬を核に向けて放つ。


1撃目。核の表面に傷がつく。


2撃目。亀裂が走る。


3撃目。深く食い込む。


4撃目。ゴーレムの動きが鈍くなる。倒れたまま腕を動かそうとするが、制御が乱れている。


5撃目。


核に深いヒビが入り、そこから光が漏れ出す。


ゴーレムの動きが止まる。腕が岩盤に落ち、そのまま動かなくなる。全身の岩が少しずつ崩れ始め、核の光が消えた。


静かになった。


全員が息を整える。


「やりましたね!」


カイルが声を上げる。疲労が滲んでいるが、笑っていた。


「……そうだ」


ハンスが短く頷く。


魔石と硬岩の回収を始める。ゴーレムが崩れた岩の中から、核の欠片と硬岩を慎重に取り出す。前回の失敗から学んだ連携が、今回は機能した。消耗も昨日より明らかに少ない。


ユイは回収作業を見ながら、周囲を確認した。


ゴーレムの個体数が多い。岩場や深森でも感じた感覚と同じだ。前世の記憶より、確実に密度が上がっている。


その考えが頭をよぎった瞬間、アイリスの声が飛んだ。


「3体目、来ます」


岩肌の向こうから、新たなゴーレムが姿を現した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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