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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第14章 山と、消えた痕跡

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第107話 戦術の再構築

岩陰に全員が入った。


風が岩の稜線を越えて吹き下ろしてくる。標高のせいで気温が低い。セリスが手早く全員の状態を確認し、カイルの腕の打撲に布を当てた。


「痛みはありますか」


「動かせます。問題ありません」


カイルは即座に答えた。強がりではなく、本当に戦える状態だとユイは判断した。


エルザが手首を静かに回す。痺れが残っているが、刃を握れる。短剣を叩いた衝撃が、まだ骨の奥に響いているようだった。


「整理する」


ユイが全員に向かって言った。岩陰に集まった8人が視線を向ける。


「あの個体は外皮が厚い。通常の斬撃は通らない。ハンスのハンマーも同様だ。有効だったのはセイラの氷槍だけだ」


「関節部分ですわね」


リリアが静かに続ける。


「接合部に亀裂が入りました。氷が収縮することで隙間を広げる、という原理だと思いますわ。継続的に冷やし続ければ、亀裂はさらに深くなるはずですわ」


「消耗が大きい」


セイラが低く言う。氷槍を連続して放てる状態ではないという、率直な報告だった。


「1発ずつでいい。間を空けろ。その間、他が関節から意識を逸らす」


ユイが答える。


沈黙が少しあった。


「……足元に使える地形がある」


エルザが口を開いた。短い言葉だったが、全員の視線がそちらに集まる。


「この先、傾斜が急になる箇所がある。岩盤が斜めになっている。あそこにゴーレムを誘導すれば、自重でバランスが崩れる可能性がある」


「転倒させる、ということか」


ユイが確認する。


「……そうだ」


「傾斜地まで誘導する間、誰かが引きつける必要がある」


「それは俺が」


カイルが即座に言った。


「前衛がゴーレムの注意を引く。後ろに誘導しながら下がる。ハンスと俺で交互に引きつければ、少しずつ動かせるはずです」


「……受け止めるより、流す」


ハンスが静かに言った。低い声が岩に吸い込まれる。


「そうだ。押し合いはするな。ゴーレムの重さを利用して、方向だけ変えろ」


ハンスが短く頷く。


「……わかった」


「転倒したところで核を狙う」


リリアが地図の端に簡単な図を描きながら続けた。


「ゴーレムの核は胸部中央にあると資料に書かれていましたわ。転倒すれば高さの問題がなくなる。そこをユイが風刃斬で狙う。私が光魔法で核の位置を照らし出しますわ」


「俺とアイリス、エルザで核へのルートを作る。外側から削って通路を開ける」


ユイが補足する。


「了解だよ」


アイリスが短く言った。普段の軽口がない。真剣な顔をしていた。


「エルザ」


「……わかった」


全員の役割が決まった。


ユイは作戦を頭の中で1度回した。前世でも似たような戦法を使ったことがある。ただ、あの時は1人だった。今は8人いる。8人がいれば、1人ではできなかった段取りができる。それが今の強みだ。


「1つ確認する」


ユイが全員を見た。


「転倒させるまでの間、誰かが関節に当たり続ける必要がある。セイラ、間隔を空けながらでも対応できるか」


セイラは少し間を置いた。


「……問題ない」


「無理をするな」


「……無理ではない」


短い答えだったが、確信があった。


リリアがセイラの方を見て、静かに頷く。暴走のリスクは常に頭に置いている。ただ今は大丈夫だと判断した。


「やってみます」


カイルの表情に先ほどの萎縮はない。


「あとは実際にやって、ずれたら修正する」


ユイが立ち上がる。


「急がない。確実にやる」


全員が頷いた。


作戦会議の最後、アイリスが立ち上がりながら周囲を確認していた。索敵の癖が抜けない。それがアイリスの強みだ。


「……何か変なものがある」


唐突に、アイリスが言った。


軽い調子ではなかった。会話の流れを止める一言だった。


全員の動きが止まる。


「岩の間に」


アイリスは目線を落とし、岩陰の奥を指した。


「人が使うようなものが落ちてる」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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