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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第14章 山と、消えた痕跡

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第106話 ストーンゴーレム、初遭遇

山岳の中腹に入ると、景色が変わった。


木々が減り、剥き出しの岩肌が増える。足場はさらに不安定になり、大小の岩が重なり合った地形が続く。風が強く、吐く息が白い。セイラの周囲だけ、空気がわずかに冷えていた。


「ゴーレムの目撃情報はこの辺りからですわ」


リリアが地図を畳みながら言う。ここから先は、立ち止まって広げる余裕も少ない。


「索敵を上げろ。音に気をつけろ」


ユイは声を落とした。岩場では音が反響する。方向が掴みにくい。


前世でもこのエリアでストーンゴーレムと対峙したことがある。重い動作、鈍い速度、だが一撃の重さは別次元だった。あの時は単独。今は8人いる。それが決定的な違いだ。


アイリスが先行し、岩陰を確認していく。エルザが反対側の死角を自然に埋める。二人の動きが噛み合っていた。


「……静かすぎる」


エルザが足を止めた。


次の瞬間、地面が低く揺れた。


岩が動いた。


いや、岩ではない。岩の形をしたものが、ゆっくりと立ち上がる。高さ4メートル近い巨体。灰色の岩で構成された全身。関節部分だけがわずかに色味が違う。腕は長く、足が踏み出されるたび岩盤が沈む。


ストーンゴーレムだった。


「でかい」


アイリスが漏らす。


「カイル、前。ハンスと並べ」


「はいっ!」


カイルが大盾を構えて前に出る。ハンスがその隣に立つ。二人で横に並べば壁になる。


ゴーレムの動作は遅い。だが、一歩踏み出した瞬間、重量が空気を押し潰す。小石が弾け、地面が震える。


「来る!」


ゴーレムの腕が横薙ぎに振られた。速くはない。しかし、腕一本の質量が常識を外れている。


カイルが盾で受けた。


「っ——」


衝撃が全身を貫き、足が岩盤を滑る。膝が折れかけた。


「押さえる」


ハンスが即座に背後から支える。二人で受け止めても、体が後退する。


「刃が通らない!」


エルザの短剣が外皮を叩く。硬い音だけが響き、傷は入らない。衝撃が手首に返る。


「ハンス、ハンマーで叩け」


ユイが指示する。


ハンスが大型ハンマーを振り上げ、側面へ叩きつけた。


鈍い音が山に響く。


だが、砕けない。


岩を叩いた音と変わらない。ゴーレムはゆっくりと首を回し、ハンスを見下ろす。


前世の個体より、硬い。


その感覚が、はっきりと残る。


「関節を狙え。胴体は無理だ」


ユイが指示を飛ばす。関節が弱点なのは変わらない。ただし位置が高い。


エルザが岩の段差を踏み台に跳ぶ。肩口の関節へ刃を伸ばすが、半歩届かない。


「セイラ」


「……了解」


氷槍が形成され、左肘の関節へ放たれる。


命中。


接合部に小さな亀裂が走った。


確かな手応え。


「効く。続けろ」


だが、セイラの呼吸が乱れている。連射は難しい。


ゴーレムの腕が再び振り上がる。今度はユイの位置へ。


横に跳ぶ。風圧が頬を叩く。


風刃斬なら届く可能性はある。だが、この角度では無理だ。


「一回引く」


ユイは即断した。


「距離を取れ。追わせるな」


全員が段差を利用して後退する。ゴーレムは遅い。追いつけない。


十分な距離を確保したところで足を止める。


セリスが即座に状態を確認する。カイルは腕に打撲。エルザは手首に軽い痺れ。他は大きな損傷なし。


「引き分け、ですね」


カイルが息を整えながら言う。


「初見で落とせる相手じゃない」


ユイは短く返す。想定内だ。


だが、別の事実が静かに刻まれる。


前世で戦った個体より、岩質が明らかに硬い。


変わっている。


理由はまだ見えない。


「作戦を立て直す」


ユイは全員を見渡した。


戦いは、ここからだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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