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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第13章 土と牙の試練

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第104話 帰還と次の準備

王都ティリアスの東門をくぐると、石畳の感触が足に戻った。


岩場の固い土、深森の湿った地面。2日間踏み続けた感触とは違う重さだ。食堂の煙、荷馬車の軋む音、遠くの鍛冶場の響き。街の匂いがする。


「戻ってきましたね」


セリスが小さく言った。張り詰めていた空気が、わずかに緩む。


「ゴードンのところへ寄る」


ユイが短く告げ、荷物を背負ったまま鋼鉄の爪亭へ向かった。


扉を押すと、炉の熱と金属の匂いが流れ出る。カウンターの奥で作業していたゴードンが顔を上げた。


「帰ったか」


ユイは布袋をカウンターに置く。


「硬鱗9枚、魔核4つ、鋭牙7本、魔獣皮4枚だ」


ゴードンは無言で一つずつ手に取り、確かめる。硬鱗を光にかざし、断面を見る。魔核を掌で転がし、重みを量る。鋭牙の刃先を指でなぞり、魔獣皮の張りを確かめる。


しばらくして、口の端がわずかに上がった。


「思ったより悪くない」


「ありがとうございます!」


カイルがぱっと顔を明るくする。


「褒めてない。評価だ」


淡々とした声だが、否定でもない。素材を丁寧に並べ直しながら、ゴードンは続ける。


「次は何を狙う」


「魔石と硬岩だ」


「ストーンゴーレムか」


「ああ。山岳に入る」


ゴードンは腕を組む。


「推奨レベルは25だ。今のお前らには高い」


「分かってる。急がない」


「そうしろ。無理をして戻ってこなくなるのは御免だ」


ぶっきらぼうな言い方だったが、意味は伝わる。ユイは小さく頷いた。


店を出ると、夕方の光が石畳を赤く染めていた。


拠点に戻り、広間のテーブルを囲む。荷物を下ろすと、疲労がどっと押し寄せた。だが、今は整理が先だ。


「成果を確認する」


ユイの声に、リリアが紙を広げる。


「硬鱗、魔核、鋭牙、魔獣皮。4種確保ですわ。後半は連携が安定しましたが、アーマーリザード戦の初動は遅れました。改善の余地があります」


「俺、最初に弾かれた時に焦りました。次は落ち着きます!」


カイルが拳を握る。


「……消耗が大きい」


エルザが短く言う。


「……継戦時間を考えるべきだ」


ハンスが続けた。


「次は山岳だ。ただし急がない」


ユイは全員を見渡す。


「ギルドで情報を集める。装備を整える。今日は休め」


「了解です!」


「承知しましたわ」


「はーい」


「……休む」


それぞれが立ち上がり、廊下へ消えていく。足音が遠ざかり、やがて静まった。


一人になる。


ユイは机の上の地図を広げた。王都ティリアスを中心に、岩場、深森、山岳、湿原が描かれている。


指を岩場の位置に置く。


あの場所。奥の方に、確かに違和感があった。


深森でも同じだ。視界の端、気配の流れが不自然に途切れていた方向。夜明け前、一瞬だけ見えた青白い光。


指をゆっくりと動かす。


岩場と深森、その延長線上。街道から外れた地点に、地図上では何も記されていない空白がある。


気配の方向。光の位置。臭いの違い。


三つが重なる。


空白の先に、何かがある。


指が止まる。


今は動かない。


素材を揃える。装備を整える。山岳を越える。それが先だ。


だが、何かが動いている。


地図を畳み、引き出しにしまう。


窓の外は夕暮れだ。赤い光が石畳を染め、街の喧騒が少しずつ落ちていく。


廊下の向こうから、セリスの明るい声が聞こえた。夕食の支度を始めたらしい。カイルが手伝うと言って、慌てて止められている。


ユイは小さく息を吐き、立ち上がる。


今は日常を守る。


その先にあるものは、まだ触れない。


第13章 完

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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