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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第13章 土と牙の試練

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第103話 帰路、静かな違和感

夜明けとともに全員が動き始めた。


焚き火の残り火を消し、野営の痕跡を最小限に片付ける。踏み荒らした地面を均し、灰を埋める。痕跡を残さないのは基本だ。


セリスが順に水の癒しを施す。筋肉の張りを和らげ、関節の違和感を軽減する。1人ずつしか行えないため、全員に行き渡るまで時間がかかる。


朝の森は、昨夜とは別の顔をしていた。


鳥の声がある。枝を渡る小動物の気配。虫の羽音。光が葉の隙間から差し込み、地面にまだらな影を落とす。


昨夜の静寂が嘘のようだった。


そのことが、かえって引っかかる。


「装備確認。出発する」


短い声で全員が動く。隊列を組み、深森を抜け始める。


歩きながら、ユイは昨夜光った方向を一度だけ見る。


何もない。


ただ木々が並んでいるだけだ。


「昨夜より明るいね」


アイリスが軽く言う。


「そうですわね。夜と朝では別の場所のようですわ」


リリアが答える。


「……昨夜の静けさは、まだ気になる」


エルザの声は低い。


「……同じだ」


ハンスが短く続けた。


誰も否定しない。


森を抜け、草地へ出る。


視界が開ける。朝の光が広がり、風が通る。肩に入っていた力がわずかに抜ける。


「硬鱗と魔核、鋭牙と魔獣皮。第1フェーズは終わりましたね!」


カイルの声が少し明るい。


「ああ。想定より時間はかかったが、全員無事だ」


「次はストーンゴーレムですか」


「急がない。一度拠点に戻って整理してから判断する」


「了解です!」


街道へ向かう足取りは、昨夜より軽い。


戦闘を終えた後の緩みが、会話を増やす。


カイルがリリアと昨日の連携を振り返る。セリスがアイリスに食事の話を振る。ハンスは無言だが、歩幅は安定している。セイラは変わらず静かに歩く。エルザは会話に入らず、左右を見ている。


ユイは全体を見ながら歩く。


整理する。


アーマーリザードの鱗は想定より固かった。


ダイアウルフは7体。資料では5体が標準。


深森の夜は静かすぎた。


光が一瞬走った。


一つ一つは小さい。


だが、重なる。


街道が見え始めた頃、アイリスが何気なく口を開いた。


「そういえば、王都でも変な噂があったんだよね」


軽い口調だ。


「変な噂?」


「冒険者が何人か、消えてるらしい。ギルドでは依頼失踪扱いだけど」


空気がわずかに変わる。


「依頼失踪扱い、というのは」


リリアが問う。


「依頼中に戻らないやつをそう処理するんだけど、普通は痕跡が残る。今回はそれがないらしい」


「……場所は」


エルザが低く聞く。


「北の森と、あとどこかの街道。詳しくは公開してないみたい」


それだけ言って、アイリスは前を向く。


ユイは表情を変えない。


ただ、歩幅を崩さないまま、情報を置く。


冒険者の失踪。


痕跡なし。


依頼失踪扱い。


「失踪って、魔物に……?」


カイルが小さく言う。


「分からない。痕跡がないなら、魔物とは限らない」


アイリスが肩をすくめる。


会話が少し沈む。


「今は報告だけでいい。判断は拠点に戻ってからにする」


ユイが静かに言った。


全員が頷く。


遠くに王都の外壁が見え始めていた。


朝の光の中、街は何事もない顔をしている。


だが、足元の違和感は消えない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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