表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第13章 土と牙の試練

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
102/120

第102話 静寂

素材の回収が終わったとき、全員の体に疲労が重く残っていた。


鋭牙7本、魔獣皮4枚。数としては問題ない。だが腕や足に力が入りにくい。岩場からの移動、連続戦闘。その蓄積が、今になって表に出ている。


森の空気は湿っている。呼吸は落ち着いているが、緊張が抜けきらない。


「今夜は森の中で野営する」


ユイが告げた。


カイルが顔を上げる。


「出られませんか?」


「出られる。ただし、この状態で夜の街道を歩くのは無駄にリスクが高い。休んでから動く」


数秒の間。


「……了解です」


全員が頷いた。


少し開けた場所を選ぶ。大きな木が風を遮り、地面は比較的平らだ。落ち葉を払い、焚き火を起こす。


小さな炎が生まれ、やがて安定する。


光の輪が広がり、全員の顔を浮かび上がらせた。影が背後へ伸びる。


「怪我の処置を済ませる。順番に」


リリアとセリスが動く。


カイルの右腕。アイリスの左腕。セリスの足首。癒しの光と水の癒しが順に当てられる。1人ずつしか対処できないため、時間がかかる。


その間、エルザが無言で薪を整えた。炎の高さを一定に保つ。


ハンスは少し離れた位置で立ち、周囲を見続けている。背中が森へ向いている。


処置が落ち着き、全員が焚き火を囲んで腰を下ろした。


「お腹すきましたね」


セリスが干し肉と硬いパンを取り出す。戦闘糧食だ。味は淡白だが、温かい炎の前では悪くない。


咀嚼する音が、静かな夜に小さく響く。


「次の目標はストーンゴーレムですわよね」


リリアが言う。


「ああ。ただし推奨レベルは25。急がない」


「慎重にいくのが正解ですね!」


カイルが応じる。


今日の戦闘について短く振り返る。タイミング、足場、包囲の崩し方。口調は穏やかだが、内容は具体的だ。


ユイは聞きながら、干し肉を噛む。


焚き火の炎が揺れ、木々の影が動く。


しばらくして。


「……この森、静かすぎる」


エルザが呟いた。


会話が止まる。


誰もすぐに否定しない。


耳を澄ます。


焚き火の爆ぜる音。風が葉を擦る音。


それだけだ。


深森には夜行性の小動物がいる。枝を渡る音。草を踏む気配。虫の声。


今夜は、それがない。


「言われてみれば……」


アイリスが周囲を見渡す。視線が定まらない。


「こんなものですの?」


リリアが問いかける。


「……違う」


エルザは短く言った。


「以前、この種の森に入ったことがある。夜は鳴き声が絶えなかった」


「深森の夜行性の生き物は、一定の騒がしさがありますわ」


リリアが補足する。


静寂が、焚き火の外側に広がっている。


ユイは炎を見つめた。


森の夜は、本来はもっと動いている。


今は、止まっている。


何かがいないのか。


それとも、何かが近いのか。


判断はつかない。


「警戒は緩めない。交代で見張りを立てる。まず私とハンス。次をカイルとエルザ」


「了解です」


「……承知した」


順に横になり、休む。


夜が深まる。


焚き火が小さくなる。風が止む。静寂が濃くなる。


ユイは立ったまま森を見ていた。


星が、木々の隙間に見える。


夜明け前。


森の奥の方向で、光が走った。


一瞬。


青白い。


すぐに消える。


距離がある。音はない。


焚き火の反射ではない。虫の発光でもない。


ユイは視線を固定する。


再び光ることはない。


だが、確かに見た。


何かが、動いた。


確証はない。


それでも、夜明けまで視線を外さなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、

ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、とても励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ