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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第13章 土と牙の試練

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第101話 7体の群れ

唸り声が近づいた。


低く、重く、森の奥で重なっている。足音は聞こえない。だが、木の葉の揺れが変わった。左から右へ。弧を描くように動き、包囲を狭めてくる。


「左側面に回り込もうとしている」


アイリスが低く言った。視線は止まらない。呼吸も乱れていない。


「2体、右奥にも」


「7体だ」


ユイが静かに告げる。


カイルがわずかに振り返る。


「7体ですか」


「多い。ただし推奨レベルは10。崩れなければ対処できる」


言葉は短い。だが、その場の空気が引き締まる。


森は視界が狭い。木々が音を吸い、影が死角を作る。群れはそれを使う。


全員が無意識に呼吸を整えた。


「カイル、前に出て引きつけろ。ハンスは左側を固めてくれ。アイリスとエルザは右側面を警戒。セリスは足場を確認しながら後退。セイラとリリアは後衛を維持。撃つ前に声をかけてくれ」


声は低く、速い。


「了解です!」


「……承知した」


「了解だよ」


「……そうね」


返答が重なった瞬間、草を踏む音が一斉に増えた。


正面の茂みが揺れ、1体目が姿を見せる。


ダイアウルフ。


体高は1メートルを超える。青灰色の毛並みが薄暗い森で淡く光り、黄色の瞳がこちらを射抜く。牙が覗き、唾液が落ちた。


続いて2体目、3体目が左右の茂みから現れる。


間合いを測っている。


カイルが踏み込んだ。


「こっちだ!」


大声で注意を引く。1体目が反応し、低く身構える。


同時に2体目が左へ回り込もうとした。


ハンスが進路に入る。


巨体が前に出るだけで道が塞がる。石の壁のようだった。ウルフが一瞬足を止める。無理に突っ込まず、角度を探す。


「セリス、足元」


「はいっ!」


セリスが杖を向け、水弾を地面に放つ。泥が締まり、踏み込みが安定する。森は根と湿土が絡み、力が逃げやすい。


右側面から4体目が速く動いた。


アイリスが後退しながらナイフを2本投げる。1本が肩に刺さり、速度が落ちる。もう1本は外れたが、軌道をずらすには十分だった。


「エルザ」


「……行く」


影が濃い。


木々に遮られた森の中では、影潜みが機能する。


エルザの姿が一瞬、揺らいだ。


次の瞬間、4体目の側面にいる。短剣が首筋へ入る。深くはない。だが確実に怯ませた。


「ハンス、今だ」


「……そうだ」


重撃が振り下ろされる。


左側面の2体目が正面から叩かれ、木の幹へ吹き飛ぶ。重い音が響き、幹が震え、落ち葉が舞った。


1体撃破。


しかし、止まらない。


5体目と6体目が同時に後衛へ向きを変える。


包囲を完成させる動き。


「リリア、後退してくれ」


「わかりましたわ」


リリアがセリスとともに下がる。


その瞬間。


セイラが前へ出た。


空気が、わずかに冷える。


「……下がれ」


短い一言で、全員が半歩退いた。


「凍結」


氷が地を走り、5体目の前脚を包む。範囲は狭い。だが確実に止める。


群れの動きが一瞬、乱れた。


ユイが動く。


凍結で止まった個体の横へ回る。木の根を越え、踏み込む。


足元がわずかに沈んだ。


ほんの一瞬。


それでも止まらない。


風刃斬。


直線3メートル。


関節部へ。


刃が入る。


5体目が崩れ落ちる。


6体目がリリアへ向かおうとした瞬間、背後から短剣が入る。


エルザだ。


毒は使っていない。だが急所を外さない。


6体目が沈む。


残り3体。


カイルが1体を引きつけ続けている。盾に牙が当たり、火花が散る。


7体目がハンスの前に現れた。


ハンスは動じない。


重撃を構え、突進を待つ。


間合いに入った瞬間、叩く。


「……落ちろ」


低い声とともに、7体目が地に沈んだ。


最後の2体。


群れの統率が崩れている。


カイルが位置をずらし、正面へ誘導する。


ユイが角度を取る。


風刃斬。


1体。


続けて、もう1体。


血の匂いが森に広がる。


静寂が戻った。


7体、全滅。


誰もすぐには動かない。


荒い呼吸だけが、重なる。


カイルが膝に手をつきながら顔を上げた。額に汗が光っている。


「少しだけ、合ってきた気がします」


笑みがある。


「……そうだな」


ユイは短く頷いた。


確かに噛み合った場面があった。ハンスの間合い。エルザの影の入り。セイラの凍結。


岩場よりも迷いは少ない。


だが、自分の踏み込みが一瞬乱れた。


その感触は、消えない。


「回復を先に。素材は後だ」


「はいっ」


セリスがリリアと動き始める。


ユイは立ったまま、森の奥を見た。


唸り声は消えている。


だが奥は暗い。


7体。


資料では5体が標準だった。


その差が、静かに残る。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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